2022年3月
先月は働きながら介護について在宅介護主体でまとめましたが、今回は介護施設の選定、自宅の管理・処分を含めた終の棲家という視点です。
高齢の親の終末をどこで迎えようと考えていますか。
ご自身が65歳を超えている場合も含めて考えるべきものです。
一般的には、自宅か病院というケースが多いと思いますが、火葬や納骨などの手続きを行うための「死亡診断書」を受取るためには、自宅と病院で遺族の対応が変わることをご存じですか。
病院であれば、臨終時に立ち会った医師が「死亡診断書」を作成してくれますが、自宅の場合には、医師に来てもらうことになります。
在宅医療で継続的に診てもらっているかかりつけ医がいる場合には、かかりつけ医が持病による死亡で間違いないと確認すると「死亡診断書」を作成してくれます。
かかりつけ医がいない場合には、警察署へ連絡します。警察は事件性が無いことを確認した上で「死体検案書」を作成してくれます。
注意するのは、救急車を呼ばない。
蘇生する可能性があれば搬送してくれますが、明らかに死亡している場合には、救急隊員は警察を呼んで帰ります。(救急車は遺体搬送することができない)
遺体を動かさない。
警察が介入する場合は、亡くなった人の状態をそのままにしておくことです。
玄関先で倒れていた、トイレで下半身を出していた場合などは、親族の心情として、キチンと布団へ横たわらせたいのですが、勝手に遺体を動かすと事情徴収され事件性が無いことを確認するのに手間がかかります。
死亡診断書・死体検案書を受領すると7日以内に死亡届を提出するのですが、今回の本題ではありませんので割愛します。
高齢化の進展に伴い介護が必要になったらどうするのか。また介護までは必要ないものの体の衰えと共に生活を維持することが難しくなったらどうするのかと悩むようになります。
概ね70歳代となると、腰や膝が痛い、歩くのが辛いなどの症状がでることが多くなりますが、ここで安易に自宅をリフォームするのは止めた方が良いでしょう。
階段やトイレに手すりをつけるなどの簡易な改築であれば、介護保険を適用することで数万円程度の費用で済みますが、車椅子対応となると多額の費用が必要になることが多いです。
多額の費用を必要とするリフォームは、「在宅介護」ができる体制を整えてからでないと無駄になることもありますし、在宅介護が難しいので介護施設へ入ろうとした時の費用が不足することもあるからです。
在宅介護ができる体制とは、家族全員が協力すること(誰か一人に負担を押し付けると早々に限界が来ます)、介護サービスを利用することですが、これについては2月の働きながら介護で記載していますので、ご参照下さい。
在宅介護に限界が来た、配偶者が死亡してお一人様になった、夫婦共に高齢となり子供達に迷惑をかけたくない等、介護施設へ入居するする理由は様々ですが、どのような施設があるのか各々のポイントを整理しました。
介護施設
- 特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護3以上で申込できる公的施設であり、入所すれば原則として終の棲家にできます。しかし待機者が多く入所するまでに何年もかかる場合もあります。
月額費用は所得により4段階になっており6万円から23万円程度
- 介護老人保健施設(老健)は、退院後にリハビリを目的に入所する公的施設で6カ月などの入所期間制限がありますが、特養の待機者も多く、入所期間が長くなる場合もあります。
月額費用は10万円から25万円程度
- 介護付き有料老人ホーム
主に介護目的で入所する施設であり、24時間・365日介護が受けられます。(特定施設入居者生活介護指定)
月額費用は13万円から40万円程度:入居一時金をゼロにした場合は月額費用が高額になり、介護を受ける場合は所定の費用が必要になります。
- 自立型ケアハウス
要介護認定を受けていないが、自立した生活が困難な60歳以上の人が利用でき、食事、掃除などの生活支援、緊急時の対応サービスなどが受けられます。
月額費用は7万円から20万円程度
- 介護型ケアハウス
要介護認定を受けている65歳以上の人が利用でき、24時間・365日介護が受けられます。(特定施設入居者生活介護指定)
要介護度が上がり介護の頻度や内容が増えても長く住むことができます。
月額費用は12万円から25万円程度、介護を受ける場合は所定の費用が必要になります。
〇 自立型、介護型を合わせた混合型もあります。
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
見守りと医療相談等が受けられ、主にマンションタイプの施設なので、宅配などの受け取りなども依頼できます。
介護や食事の提供は施設ごとに異なります。
月額費用は12万円から25万円程度:食事の提供などの費用は別途必要
これらの介護施設の入居条件があり入居金が必要なものもありますから、条件を十分に検討しますが、注意して頂きたいのは「居心地が良いのか」ということです。
通所型の介護サービスであっても、自分に合わないと感じるところへ通うのは嫌ですし、入居型となれば我慢を重ねるのは苦痛です。
入居して数か月くらいは様子見期間と考え、終の棲家として納得できれば一番良いのですが、退去して他の施設へ移動する可能性があることも想定して入居条件を検討する必要があります。
また高額入居金が必要な施設が入居時のサービスを継続可能なのかも検討しなければなりません。
現時点は豪華で充実したサービスを提供していても、10年、20年と続く長い老後期間を通じて安定して運営できるとは限りません。
有料老人ホームの経営者が交代したら食事は不味くなり、常住していた看護師が減った等のサービス低下事例は沢山ありますから、万が一を考慮して払える範囲内の施設を選択することは必要です。
東京商工リサーチ公表:2020年1月から12月2日まで「老人福祉・介護事業」倒産が112件に達し、介護保険法が施行された2000年以降で、これまで最多だった2017年と2019年の111件を上回り、最多件数を更新した。
現在の住まいが賃貸であれば健康と費用を考慮して介護施設を考えれば良いのですが、自宅の場合には、自宅の管理処分も検討します。
管理処分には、
- 自宅を売却する。
建物が古い場合には解体して更地にするのか、現況のまま売るのか=解体付き土地売買等が考えられます。
問題なのは何ら対策しないまま空家にすることです。
空家になりますと痛みが急速に進み、倒壊の危険・雑草・悪臭・害虫などの衛生悪化 ・景観の悪化 ・不法侵入者などによる治安の悪化 ・放火被害のおそれ・不動産価値の下落などもあります。
- 自宅を賃貸にする。
建物が古くてもリノベーション技術は向上しており立地次第で検討可能です。
3.自宅を担保とし、融資枠内で融資を受ける(住宅金融支援機構と提携):リ・バース60
返済金額が利息のみとなります。
4.自宅を売却し、売却代金を受け取り、売却と同時に賃貸借契約を締結し、毎月家賃を支払う。(賃貸借の種類は定期借家が多い)=リースバック
などがあり、リ・バース60・リースバックは、配偶者が自宅へ残る場合の選択肢です。
この場合に注意して頂きたいのが、自宅の所有権です。高齢になれば痴呆症になる可能性が有り、痴呆症となれば自分で自宅の処分は出来なくなりますから、事前に家族信託で所有権を配偶者・子へ変更する必要があります。
とはいえ、家族信託を設定するには数十万円(自宅の評価によっては100万円を超える可能性も)の費用が必要ですから、高齢であっても意思能力が健常な場合は、家族信託を設定するのかを判断する必要があります。