2023年5月

定年前に必ず必要なのは健康保険を何にするのかです。これだけは、どれかを選択する必要がありますが、その他は定年後も働く意欲がある人又は働かなければならない人、配偶者の年齢が若い人、老後資金に余裕を持ちたい人などは準備が必要です。

 

項目 注意点
健康保険 ①   在職中に加入していた保険で2年間の任意継続
②   国民健康保険へ加入(国保)
③   子や孫の扶養家族になる
年金受給 年金の繰り下げ
雇用保険:失業手当 受給要件がありますのでハローワークで確認
住宅ローン 残高の確認及び自宅の査定

 

注意点

健康保険

  • 任意継続の場合の健康保険料は全額個人負担です。(在職中は半額が会社負担)それでも、前年度の収入で保険料が決められる国保より安い場合が一般的であり、多くの会社員は任意継続を選択します。

退職日以後20日以内に申請が必要ですが、退職前に人事部等へ依頼するのが便利です。

保険料の支払いを忘れると資格喪失となりますから、支払い期日を忘れないこと。

また2年経過後は国保へ移行しますが、前年度の収入は減っていますから国保の保険料は安くなります。

  • 国民保険へ加入する

前年度の収入で保険料が決められる国保へ加入すると保険料が高くなります。

各市町村で保険料に多少の違いはありますが、年齢が65歳未満と65歳以上では約10万円相当の違いがあり、前年度の収入が仮に500万円だとすると年間で

約42万~51万円となります。

しかし定年退職でなく会社都合による退職(倒産・嘱託打ち切り等)で65歳未満の場合は、前年度の給与所得の3割を国保の計算根拠とするため、任意継続よりも保険料が安くなります。

  • 子や孫の扶養家族になる

保険料の支払いは不要です。

高齢になると医療費が増えることが多いのですが、特に2世帯住宅で同居している場合には、医療費控除をまとめることで税金負担が減少するメリットもあります。

また父母、祖父母などの直系尊属の場合は、同居要件はありませんが、収入要件が定められていますので、年金事務所で相談して下さい。

 

健康保険だけは、誰でも必要なものなので、上記の中から選択することになりますが、以下は、各々の資産内容や健康状態、家族構成で検討が必要です。

年金受給

  • 年金受給額の範囲内で生活している人は沢山います。

特に、夫婦共働きで夫婦共に厚生年金と国民年金を受給している場合には、月額40万円超となりますから老後の生活費として十分です。

しかし配偶者が専業主婦の場合には、一人は厚生年金と国民年金、配偶者は国民年金では月額20万~24万円前後なので、生活費が不足します。

  • 退職金に余裕があり直ぐに年金を受給しなくても生活できる場合には、年金繰下げは老後資金の確保に有効です。

月当り0.7%×12=年当り8.4%も増える金融資産はありませんし、増加した年金は死亡するまで続きます。

65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数×0.7%

  • 70歳代で死亡すると受給する年金総額が少なくなるから損だと考える人もいますが、筆者は年金を保険と考えており、長生きリスクへの最適な方法です。
  • 注意して頂きたいのは、老齢厚生年金は、65歳以降も働くことで増加しますが、(給与+賞与)÷12の金額が48万円を超えた場合には受給している年金額から次の計算式で算出した金額分が減額されることです。

基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-48万円)÷2

基本月額とは、加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額のことです。

但し、老齢基礎年金と老齢厚生年金の双方が受給できる人は、どちらか一つだけを繰り下げることもできるので、減額対象ではない、老齢基礎年金のみを受給することも一案です。

また年金を繰り下げた場合、配偶者が65歳未満の場合に受給できる加給年金が支給停止となりますので、年金相談センターや年金事務所で、自分の年金額を確認して検討して下さい。

 

雇用保険:失業手当

  • 誰でもが貰えるものではありません。定年退職して働く意欲が無い場合なども貰えません。
    • 積極的に就職しようとする意思があること
    • いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること
    • 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと

失業した人が安定した生活を送りつつ、1日も早く就職してもらうことが原則なので、給付期間中は、認定日ごとに(毎月1回)求職活動の実績を報告します。

給付期間や金額はハローワークで確認するのですが、もし、所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して、安定した職業に就き、支給要件を全て満たした場合に、再就職手当が支給されるのは嬉しいものです。

  • 定年退職して働く意欲が無い場合は貰えないのですが、半年程度はのんびりしてから働きたいと考えている場合には、退職日の翌日から2か月以内に受給期間の延長申請を行います。

延長申請により、本来の受給期間1年間に求職申込みをしない期間を加えることができ、仕事を探せるようになった後に、受給手続ができます。

受給期間に加えることができる期間は、最大1年間です。

 

住宅ローン

  • 自宅購入時の年齢によりますが、定年前に住宅ローンの支払いが完了している人は少なく、退職金で残債を支払う人が多いのです。

しかし退職金は定年後の重要な資産ですから、退職金額(+貯蓄残高)と返済金額のバランスが重要です。

仮に、住宅ローン残債が1,000万円として、退職金全額(+貯蓄残高)の1,000万円で返済してしまうと、結果として借金は無いものの余裕資金がゼロになります。

住宅ローンの支払いが遅れると支払い金利の上昇等のペナルティがありますから、なるべくなら完済したいのですが、余裕資金が無いのは、何かあった場合に借金に頼ることになり、生活が苦しくなります。

  • 自宅の売却価格を調べておくことをお勧めします。

売却価格次第では自宅を売却して住宅ローンを完済して、更に余裕資金を得ることができるかもしれませんし、売却しなくても、自宅を担保にすることで大きな資金を比較的低い金利で借りることができる不動産担保ローンを使うことができます。

近年は住宅ローン返済中でも借りられるなど柔軟になりましたし、借入金利も複数の銀行を比較することでより低い金利を選ぶことも可能になります。

  • 不動産担保ローンの場合は、金利に加えて元金も返済するため月々の返済額が大きくなりますから、返済額が少なくなる「リバースモーゲージ」、自宅を売却し売却代金を受取りながら当該自宅を賃貸する「リースバック」なども検討できます。
  • リバースモーゲージは、不動産(自宅)を担保にし、融資枠内で融資を受け返済金額は利息のみで、契約終了後(死亡後)に不動産(自宅)売却か、相続人による一括返済となります。
  • リースバックは、自宅を売却し売却代金を受け取ると、同時に賃貸借契約を締結し、毎月家賃を支払いますから(賃貸借の種類は定期借家が多い)売却代金を受け取ったうえで、自宅へ住むことができます。

前の記事

2023年4月

次の記事

2023年6月