2022年10月

本年4月から高校家庭科で株式や投資信託を活用した資産形成に関する学習が必修になりました。

内容は、家計の収支バランスをどう保つのか、社会保険と民間保険の違い、単利運用と複利運用などから株式、債券、投資信託等の商品知識まで幅広いものになるようです。

日本では円安による物価上昇でインフレ若しくはスタグフレーション(悪いインフレ)の様相を示していますが、低金利は継続しており、特に若者世代に投資への関心が高まっています。

2022年3月末時点で、つみたてNISA口座数は20歳代112万、30歳代170万と約半数となっており、〇〇46などのアイドルグループ内でもつみたてNISAが話題になっているとのこと。

逆に40歳代以上の世代は、1990年代のバブル崩壊や2000年代のリーマンショックなどで投資運用に否定的な人が多いとも。

若い世代には老後を考えた時に公的年金が頼りにならないから自力で必要な資産を蓄えるという考えがあるようですが、公的年金には十分なメリットがあるので公的年金を積立ながら、自分でも資産を蓄えるために運用を継続することが良いと思われます。

そして投資・運用する際には、金融商品の特徴やリスクへの理解を深めることが大事です。

「投資はギャンブルのようなもので、堅実に貯金することが大事」という考え方も否定はしませんが、NISAやiDeCo(イデコ)の制度内容(仕組み)を知ることで、投資・運用はじっくりと商品や経済の知識を蓄え時間をかけて取り組むものだ。と理解できるでしょう。

 

昭和世代のサラリーマンは、確定給付年金でしたから定年まで勤めあげれば、その会社の責任で利回り5%前後で運用することを前提とした企業年金(定年時に確定した金額=確定給付)を受け取ることができました。

しかし退職給付に係る負担が大きすぎるので確定拠出年金制度(会社が定める年金制度によって、入社年次・役職等に基づき会社が拠出する金額を確定)が導入されました。

確定拠出年金制度では、運営管理機関(金融機関等)が選定・提示する運用商品(投資信託、保険商品、預貯金等)の中から、加入者等自身が商品を選んで運用しますから、選ぶ商品によって将来受け取る年金額が変わります。(拠出された掛金とその運用益との合計額)

そのため確定拠出年金企業型を導入している会社は、加入者に対する継続的な投資教育が努力義務となりました。

筆者も投資教育の勉強会を行ったことがありますが、あまり熱心に聞かれていないように感じたものです。

勉強会では、次の4つを理解して頂くようにしています。

① ライフプランの必要性

家族の生活費、結婚費用、子供の教育費用、住宅購入など人生でかかるお金や、老後にいくら必要になるのかなどを公的年金制度等と併せて説明します。

・公的年金制度:基本的には国民年金の概要のみですが、将来の受取金額については減額する可能性が高いことも伝えています。

・保険:年齢や家族構成などで必要とする保証内容や保証額が変わりますので、保険については個別に対応するようにしています。

② 会社の定めた退職金制度の概要

定年まで勤務した場合、転職した場合、制度の疑問点や運用状況の確認方法など。

③ 金融商品の基礎知識

従業員自身が商品を選び運用するのですから、日本の株式、債券、投資信託に限らず、海外株式(先進国、新興国)や海外債券などの商品内容について解説します。

④ 金融商品の選び方

株式、債券、投資信託、海外株式、海外債券などから、幾つか抜粋して過去実績等を提示しながらリスクとリターンに基づいて、自分に合う金融商品を選んで頂きます。

時間がある場合には、同時に資産配分の考え方も提示します。

 

①のライフプランを決めるには、前提としてライフデザインが必要です。

ライフデザインとは、自分の生き方を決めることで、どのような仕事をしたいのか、仕事をしながらキャリアアップを目指して転職を考えているのか、結婚はしたいのか、子供が欲しいのか、自宅を購入したいのか(新築または古家のリノベーション)、賃貸に住み続けるのか、将来は地方移住を想定しているのかなど、夢や目標を決めることがライフデザインです。

これらのことを漠然とイメージしているだけでは、ライフデザインも見えず、実現するためにはどうするべきかという具体的な生き方、つまりライフプランの必要性を語っても「馬の耳に念仏」という方が多いように感じました。

大多数の人には「結婚(子育て)」「住宅購入」「退職後の人生」という、3つの大きなライフイベントがあり、「子供の教育資金」「住宅購入資金」「退職後の生活資金」のどれもが数千万円の資金が必要で、この3大イベントにかかる資金を考慮したライフプラン設計が求められるのですが、人生は多様化しており個々のライフデザインによって必要資金は大幅に変わります。

必要資金は大幅に変わるのですが、お金が必要なことは事実であり、必要なお金を確保するためには、ライフデザインに基づいたライフプラン(生涯生活設計)を実現させるためのファイナンシャルプランニング(資産設計)という流れで理解して貰えるようにしています。

資産形成に関する学習も必要ですが、併せて詐欺防止教育という言葉が適切なのかは分かりませんが、これも重要な課題です。

道徳教育では、社会性・公正・努力・奉仕などに加えて近年では、インターネット上での過激な言葉の応酬、いじめ防止、幸福の多様性なども取り上げられていますが、性善説がベースにあると考えられます。

しかし詐欺師や詐欺には至らないものの自己中心的な人は必ずいるのですから、性悪説をベースに具体的事例に基づく対応方法を教えるべきです。

勿論、新たな方法を次々と考えだすのが詐欺師ですから、それらを全て教える必要はありませんが、特殊詐欺の2021年被害総額285億円、多い時には500億円を超えており、詐欺防止、迷惑行為防止の基本を知ることは被害防止に役立ちます。

例えば、家の電話は留守電にしておけば、必要な用事がある人は必要事項を録音に残してくれますから、後で電話すれば良いのです。

勧誘電話の防止にもなりますし、困ることはありません。

近年は家に電話を設置せず、携帯電話だけという家庭も増えていますが、携帯電話でも留守電は活用できますし、知らない番号には出ないのが良いのですが、もしかして緊急電話かもと不安になり通話すると、相手が警察や裁判所や弁護士などと名乗ると思わず信用してしまうかもしれません。

このような場合に、詐欺防止教育を受けていれば、どこの警察署の誰なのか、どこの弁護士事務所の誰なのかを確認してホームページに記載されている電話番号に折り返し電話することで本人確認もできますし、詐欺防止になります。

仮に「ホームページはありません」と言われた場合、警察等の公的機関であれば必ずありますし、日本弁護士連合会のホームページで弁護士を検索するなどの方法を知っていれば、簡単に真偽を確認することができます。

一戸建ての場合は、訪問詐欺が多いです。

「不用品を買い取る」と称して、貴金属を強引に安く買い取る。

「外壁や屋根に修理が必要」と迫り、信用して屋根や床下へ入らせると、自分で壊して高額の修理費用を請求する事例がたくさんあります。(リフォーム商法、点検商法)

公的機関を名乗り(消防署の方から来ました等)消火器を売りつけるなど。

高齢者世帯だと性善説に基づいた道徳教育がありますから、必ず家族間で具体的事例に基づいた防止策を話し合うべきです。

基本的には敷地に入らせない、ドアを開かないことが重要ですが、そこは詐欺師も巧妙で「お宅の前の道を工事期間中は建設機械や特殊車両が通りますから、安全のため工事案内を持参しましたのでお話を聞いて頂けますか」(実際には工事などは無い!)などの、もっともらしい理由でドアを開けてしまうと工事案内など無くて、お宅の外壁の染みが危険ですなどと話をすり替えてきます。

見知らぬ人が来た時には、原則としてインターホンで会話する。何か渡すものがあると言われた場合は「ドアロック」をかけたままドアを開けて相手を確認してから荷物を受取る。

宅配業者の制服は厳重に管理されていますし、実際に荷物を見てから開けるのであれば安心です。

電話の場合、家族や親しい人は名前が表示されるようにセットしておき、原則は留守電で対応とするなどの防止策は有効です。

簡単な事例のみを記述しましたが、自分だけでなく家族や別居している高齢親族にも教えて頂きたいと思います。

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