2023年3月

先日のニュースで、映画ダイハードなどの主役だったブルース・ウィルスさん(「ゴールデン・グローブ賞」、「エミー賞」を受賞し、世界中にファンを持つ俳優)が前頭側頭型認知症であることを家族が公表しました。

日本では高齢化の進展とともに、認知症患者数も増加しており「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人、2025年には約675万人と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。

認知症とは、病名ではなく、いろいろな原因で脳の細胞が死んだり、働きが悪くなったりして認知機能が低下し、日常生活に支障が出てくる状態(おおよそ6カ月以上継続)のことをいいます。

認知症ではアルツハイマー型が有名ですが、レビー小体型、脳血管性などがあり、前頭側頭型の発症年齢は平均50歳代であり、65歳未満で発症する「若年性認知症」の一種ですから、働き盛りの年代で、仕事への影響も大きく家族の生活が困窮する可能性が高くなります。

しかし介護が必要になる要因は認知症だけではありません。

介護=認知症というイメージがありますが、実は認知症は介護全体の18.1%と2割弱で、「脳血管疾患(脳卒中)」15%、「高齢による衰弱」13.3%、「骨折・転倒」13%と様々な要因で介護が必要になるのです。(令和3年高齢社会白書)

だからこそ長生きすると誰でもが介護が必要になる可能性があるのです。

介護が必要な人の割合を年齢別にみると、40歳~64歳=0.4%、65歳~69歳=

2.9%、70歳~74歳=5.7%、75歳~79歳=12.8%、80歳~84歳=27.8%と増えて85歳以上では60%(生命保険文化センター)となっています。

男性の平均寿命は2022年時点で81.47年、女性87.57年(厚生労働省)となっており、平均寿命を超えてくれば、介護が必要になると考えて、その準備をする必要があるのです。

しかし日本では2000年から介護保険法が施行されており、40歳以上は介護保険料を納付する義務があり、65歳以上の年金受給者も年金から天引きとなっています。

介護保険法の基本的な考え方は、

〇自立支援=介護を要する高齢者の世話をするだけでなく、高齢者の自立を支援すること。

〇利用者本位=利用者の選択により、多様な保険医療サービスや福祉サービスを総合的に打受けられること。

〇社会保険方式=給付と負担の関係が明確(保険料50%、公費50%)で、65歳以上(約3,500万人)保険料合計=2.6兆円、40~64歳(約4,200万人)保険料合計=3.1兆円となっています。

この保険料により、介護サービスの利用料は介護度や年収により1割から3割負担となっています。

介護サービスは要介護認定により次のようなものがあります。

  • 在宅サービス:訪問介護、通所介護等
  • 地域密着型サービス:定期巡回、随時訪問型訪問介護看護、認知症対応型共同生活介護等
  • 施設サービス:老人福祉施設、老人保健施設等

これらのサービスを活用しながら、不足している部分を自分で準備する意識は多くの高齢者にあると思われますが、近ごろの諸物価高騰で年金だけで生活費を賄っている場合には難しいのも事実です。

長生きするだけでお金が必要なのに、介護費用も必要となれば更にお金が必要となりますから、高齢の親の資産管理は実子の義務と考えた方が良いと思いますが、介護費用の基本は親が自分で用意するもので、実子が負担した場合には、実子の生活や老後資金に支障が出る可能性が高くなります。

 

子供に迷惑をかけたくないと考えて、ライフプランを作成して堅実に生活している人も増えていますが、筆者の周囲にも老後資金が不足するのは分かっているのに退職後の生活を変えられなくて不安を感じながらも、意外と早く死ぬかもしれないし、いざとなれば子供が何とかしてくれるだろうと、なんとなく日々をすごしている人が多いのも事実です。

日本では、親の資産管理という考え方に抵抗がある人が多いのかもしれませんが、例えば第三者であるFPを交えて客観的に相談のも一案です。

ポイントは、親の資産管理が適正にできているのか確認すること。介護保険による公的サービスの内容を把握すること。誰でも介護が必要になる可能性があることを踏まえて、準備することです。

その上で、お金が不足しそうであれば、どのように対応するのか親と一緒に考えてお金の使い方を見直ししたり、出きる範囲で補助することも必要です。

 

高齢であっても夫婦のどちらかが健康で配偶者が面倒を見ることができるのであれば良いのですが、配偶者が既に死亡している場合や持病・身体的な問題で面倒を見ることが難しいとなれば、実子が面倒をみることになりますから70歳代から準備しておくべきです。

介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となっていますが、在宅=平均4.8万円、施設=平均12.2万円と大きな差があります。

介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1カ月(5年1カ月)ですが、平均余命が長くなるにつれて介護期間も長期化しており10年以上も17.6%と増加傾向が続いています。(生命保険文化センター)

 

平均期間でも5年もありますから、費用は安くなるものの介護する人の負担が大きい在宅介護を継続するのは厳しいです。

にも係わらず、介護を理由に退職する人が毎年約10万人います(総務省統計局)。

しかし介護を理由に退職した人への退職後の意識調査では、退職して介護に専念することで経済面、精神面、肉体面の負担が減ったという人が全体の2割程度しかありません。逆に負担が増えたという人が、経済面で約75%、精神面で約65%、肉体面で

約57%もいますから、介護サービスを活用して働きながら介護を続けることが大事で、介護を受ける人も「わがままを言わない気持ち」が必要だと思いますが実際には難しいのが現実です。

 

介護が必要となった場合に最初に相談するのは、全ての市町村に1か所以上、全国に約5,000設置の(平成30年4月)地域包括支援センター(以下、「センター」)です。

親の居住地を管轄しているセンターで必要なサービスや制度について相談したり、介護予防支援を受けることもできます。

センターの主な業務は①介護予防ケアマネジメント、②総合相談、③権利擁護、④包括的・継続的ケアマネジメント、となっており、専門知識をもった職員が、親や親族が住み慣れた地域で生活できるように介護サービス、介護予防サービス、保険福祉サービス、日常生活支援などの相談に無料で応じてくれます。

要介護(支援)が認定されますと、介護保険被保険者証と介護保険負担割合証が交付され、利用者の負担割合は1割から3割となります。

次に、ケアマネージャー(以下、「ケアマネ」)と契約を結ぶのですが、介護保険サービスを利用する場合にケアマネの役割が大きく、信頼できるケアマネを選ぶことが大事です。とはいえ、初めてのことであり、誰が信頼できるケアマネなのか判断する基準もありませんし、悩むところなので、ここでもセンターに相談すると良いと思います。

直ぐに介護が必要な時に、複数のケアマネと面談して最良の人を選ぶような時間的余裕はありませんが、事務所が家と近い人とか年齢などの基準で選んで貰い、実際に会うことで多少なりとも相性の良し悪しは分かると思います。

もし相性が合わないようであれば、他の人を紹介して貰いましょう。

 

「要介護」と認定された場合は、ケアマネがケアプランを作成します。

「要支援」と認定された場合はセンターで介護予防ケアプランを作成します。

介護保険制度では、介護が必要な人に対し、ケアマネが中心となってケアマネジメントが行われます。ケアマネジメントで重要なのは、介護が必要な人の解決すべき課題や状態に即した「利用者本位の介護サービス」が適切かつ効果的に提供されるように調整を行うことであり、その責任を担っているのがケアマネになり、ケアマネは、介護が必要な人の環境や要望を踏まえ、介護度に合わせて、その限度内でケアプランを作成します。

 

最後に、建物設備は豪華で運営会社が小さく且つ入居一時金が高い施設は、要注意です。

既に10年以上の運営実績がある。ニチイ学館、SONPOケア等の大手である。なども入居を検討する際の考慮すべき項目ですが、介護施設の破綻は続いており、入居一時金が戻ってこないケースが多々あります。

また介護施設は継続しているものの経営者が交代しサービスが低下しても入居一時金は最初の経営者が持ち逃げしており施設を変更したくてもお金が無いというケースもあります。

月々の管理費(部屋代、食事代や介護料などを含む)は多少高くても、まとまったお金が手元にあればサービスの低下・ヘルパーとの相性が悪い・介護の進行などの様々な理由が生じた場合には、施設を変えることができます。

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