2022年6月
NISA口座は、2020年12月:約1,520口座→21年12月:約1,800万口座まで増加していますが、約200万口座は未稼働となっています。
イギリスのISA制度が成人人口の約半数に普及しているのと比較すると、非課税金額が少なく期間が短く、制度が複雑なため普及には課題があるとも言えます。
しかし非課税制度を使うメリットは十分にありますので、改めてご紹介します。
現行NISAと新NISA(一般NISA)
現行NISA | 新NISA | |||
1 | 非課税期間 | 5年 | 5年 | |
2 | 非課税
投資金額 |
年120万円 | 2階 | 年102万円 |
1階 | 年20万円 | |||
3 | 投資対象 | 上場株式(ETF/REIT含む)
投資信託 |
2階 | 現行NISAから高レバレッジ
投資信託を除いたもの |
1階 | 投資信託(つみたてNISAと同じ) | |||
4 | 投資期間 | 2023年 | 2028年 | |
5 | 繰越 | 新NISAへ「時価」で繰越可能 | 1階 | つみたてNISAへ「簿価」で繰越可能 |
NISAとは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年非課税枠の範囲内で購入した株式や投資信託などの金融商品から得られる利益(配当金・分配金や譲渡益)が非課税になる、つまり、税金がかからなくなる制度です。
非課税制度ですから、いくつかの要件を満たす必要があります。
要件1:利用できるのは日本在住の18歳以上(非課税口座開設年の1月1日現在)
要件2:口座は一人1口座(金融機関Aに口座を開設している場合に、他の金融機関では開設できません。但し、金融機関は1年単位であれば変更できます。)
NISAには「一般」「つみたて」「ジュニア」の3つの制度があり、この表の一般NISAが前述の通り2024年に改正されます。
一般NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | |
非課税投資枠/年 | 120万円/年 | 40万円/年 | 80万円/年 |
非課税投資総額 | 600万円 | 800万円 | 400万円 |
非課税期間 | 最長5年 | 最長20年 | 最長5年 |
投資可能期間 | ~2023年 | ~2037年 | ~2023年 |
- 新NISA
・1階部分で購入できる金額(非課税投資枠)は年間20万円、2階部分で購入できる金額(非課税投資枠)は年間102万円です。
・2階部分を利用するためには、1階部分での積立投資を行う必要がありますが、既に一般NISAで投資経験がある場合には、2階部分のみ利用可能です。
・毎年102万円分までは購入可能ですが、例えば今年80万円分のみ購入して22万円分の投資枠が余っても繰り越しはできません。
・また特定口座などの課税口座で購入した金融商品をNISA口座へ移すことは出来ず、NISA口座の損失と特定口座の利益を損益通算できません。
この他、繰越の手続きなどは、詳細が分かり次第紹介しますが、先ずは一般NISA又はつみたてNISAを開始されることをお勧めします。
- つみたてNISA
長期の資産形成を目指すのであれば、つみたてNISAを活用してください。
特徴については前述の表に記載してありますが、少額(例えば100円)からでも運用可能(金融機関毎に相違します)であり、運用対象商品は金融庁が長期投資に適していると判断した投資信託・ETFに限定されており、株式や公社債は対象外となります。
「ETF=Exchange Traded Funds」=上場投資信託とは、特定の指数、例えば日経平均株価や債券、通貨の指数等の動きに連動する運用成果をめざし、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託ですから、株式のようにリアルタイムで売買することができます。
当社の所属証券会社であるSBI証券、東海東京証券、あかつき証券にもつみたてNISA用に多様な投資信託・ETFが用意されていますが、原則として購入時手数料が無料で、長期保有に適した信託報酬の低いものが用意されています。
では、これらの商品を運用した場合に、どのような成果が得られるでしょうか?
こちらの図は、金融庁のホームページに掲載されている「つみたてNISA早わかりガイドブック」から転用しています。
ガイドブック全体をご覧になりたい方は 出典:金融庁ウェブサイト
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/tsumitate/index.html
こちらをクリックして下さい。
つみたてNISAは、継続購入による購入単価の引下げ効果と長期運用による複利効果が期待できます。
購入単価の引下げ効果とは、相場の上げ下げに一喜一憂することなく、毎月継続的に購入することで、下げ局面では多くの商品を買うことができるため、平均購入単価が低下することを言います。
複利効果とは、運用で得た収益を再投資することで「得た利益で新たな利益を得る」というものです。
短期間では値下がりした損失の方が大きい場合もありますが、継続積立なので値下がりにより沢山の商品を購入できますし、10年以上の長期間となれば、複利効果によるまとまった利益を得ることを期待できます。
金融商品の価格が変動しないということはありませんが、仮に価格一定で平均年率2%で運用できた場合、毎月1万円を20年間積み立てると元金240万円に対して、運用結果は約330万円となります。
思ったように成果が出ない場合には、商品を変更することも一案です。
取り扱い金融機関にもよりますが、一般的に商品変更は簡単ですし、過去に積み立ててきた投資信託は購入した年から20年間保有し続けられます。
また収入減少により、積み立てを継続することが難しくなった場合には「休止」することもできます。
その他、つみたてNISAは、いつでも解約可能ですから、どうしても資金が必要な時には解約することも一案ですが、全てを解約するのではなく必要資金分だけの部分解約もできます。
つみたてNISA口座全体で2018年に買い付けされた金額931億円の内、翌年に売却された額は158億円と約17%となっていますが、つみたてNISAそのものを解約する場合には、金融機関に「非課税口座廃止届出書」と本人確認書類などを提出する必要があります。
そして再度、つみたてNISAを開始する場合には、解約した翌年度になりますし、これまでの金融機関ではなく新たな金融機関で開始する場合には、口座を所有していた金融機関に対して「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を発行してもらい、新たな金融機関に対して「非課税口座開設届出書」と合わせて本人確認書類およびマイナンバーを確認できる個人番号記載書類などを提出する必要があります。
最後に、人生100年時代には定年退職者こそ、つみたてNISAをお勧めしています。
FP相談では60歳を超えたら、安全資産を増やすようにアドバイスされることが多いのですが、筆者は、つみたてNISAこそ退職金の運用に適していると考えます。
退職金が豊富で年金も多くて老後資金が十分にある場合には、銀行預金と保険だけでも良いのですが、老後資金を増やすことはできません。
運用リスクはあるものの、少なくとも10年間は、運用成績に一喜一憂することなく継続して、その後は、運用状況を月に1回で良いですから確認して下さい。
平均購入単価よりも時価が低い場合には解約すると損失を被りますから、運用成績の状況を確認するのは大事です。
筆者も退職後に、つみたてNISAを開始して5年が経過しており、先月末時点では投資利回りプラス約2割となっていますが、75歳頃を満期と考えているので一喜一憂することなく継続しています。