2022年5月

年金だけで生活できるのかと考えたことがありますか。

その前に、自分はどの程度年金が貰えるのか確認したことはありますか。

一般的な論調は、年金だけで生活することはできない。

自助努力により自分年金を作ることで老後の豊かな生活を実現できる。 等ですが、

ここで客観的に見直すことも必要かと思います。

何故なら前期高齢者になっている知人友人で年金だけで生活している人、単発の仕事で数万円を稼ぎながら基本は年金で生活している複数人いるからです。

 

年金は、1階部分として国民年金があります。これは日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人であれば誰でも加入できる制度で、令和4年度の保険料は16,590円/月。

単純計算すると、16,590円×12カ月×40年=約800万円を支払うと65歳から死亡するまで毎年約78万円を受取れるので、(今後受給額が減少するかもしれませんが)人生100年として65歳から100歳まで35年間で総額2,730万円も受け取れます。

お隣の韓国にも年金制度があり、国民年金、公務員年金、軍人年金などがあり、約7割が加入していますが、国民年金の月当たりの平均支給額は約2.9万円(2015年)であり、日本の年金制度は他国と比較して恵まれていると言われています。

 

2階部分は、厚生年金で大多数の会社員が受け取れますが、これは納めた保険料の多寡によって受給額が変わります。

3階部分は、主に大手企業が独自に設けている企業年金や公務員独自の上乗せ制度である「年金払い退職給付」で、これも納めた保険料の多寡によって受給額が変わります。

 

3階部分 大手企業、公務員等 企業年金 年金払い退職給付
2階部分 会社員 厚生年金
1階部分 自営業や農業など 国民年金

 

一般的には、1階部分から3階部分まで受給している方は、年金だけで生活可能と想定されますが、厚生労働省の調査では約半数の家庭が1階部分・2階部分の公的年金だけで生活しています。(2019年国民生活基礎調査)

老人2人の最低日常生活費22.1万円(生命保険文化センター2019年)に対して厚生年金を受給できる夫婦共働きの場合は約26.8万円となるので余裕があり、夫のみ働き専業主婦の場合は約21.9万円となるのでギリギリ年金だけで生活できることが分かります。

この数字だけを見れば、惨めな老後を想像してできるだけ老後資金を確保したいと考える方も多く、老後資金問題に関する記事は、今でも多いのですが、なるべく金をかけないで老後を楽しく過ごす方法や、働ける内は働くので健康寿命を延ばす方法など老後の視点を変える記事も増えています。

例えば、森永卓郎氏著の『長生き地獄にならないための老後のお金大全』を簡単にご紹介します(●印は森永氏の主張で、★印は筆者のコメント)

  • 30年後には、厚生年金受給世帯の受取額が約21万円から約13万円に下がる

★前提となる受給額が極端なので、この数値をどこまで信用して良いのか疑問ですが、公的年金は「賦課方式」で運営されおり、現役世代が支払った年金保険料を、その時点の高齢者で山分けする制度ですから、少子高齢化で保険料を支払う現役世代の数が減り続け、山分けをする高齢者の数が増えるので、年金給付は減少せざるを得ないのは事実です。

  • また厚生労働省は年金は減らないと主張しているが、現実離れした前提条件が、いくつもある。
  • 退職金やいままでの貯蓄を運用に回して、運用益で生活費の不足分をまかなうことです。しかし、それは絶対にやってはいけません。

バブルの広がりとバブルの大きさは、これまで人類が経験のないレベルになっています。ですから株式投資をしたら、それが3分の1とか、下手をすると10分の1に暴落しても、何の不思議もない状態なのです。

★お金の運用は大事、お勧めするのは退職金による「つみたてNISA」です。

退職金を受取る年齢が65歳であれば、3万円×12月×20年=720万円を証券会社の口座へ預けて「つみたてNISA」を開始してください。

長期・積立・分散投資に適した非課税制度であり、対象商品は公募株式投信と上場株式投資信託(ETF)です。

今年はロシアによるウクライナ侵攻の影響で景気の停滞も想定されますが、世界経済は人口増加に伴い発展するので、収益機会は十分にあります。

  • 「死ぬまで働き続ける」「田舎暮らしはお勧めできない」等々
  • 「トカイナカ暮らし」をお勧め

トカイナカというのは、都心と田舎の中間のことで、イメージ的には、東京圏だと都心から50キロ圏くらい、大阪圏だと30キロ圏くらいで、一人社会実験の結果、月13万円の暮らしは十分に可能。

物価は安く、東京・大阪へ出て働くこともでき、医療機関や商業施設もそこそこ充実している。

★森永氏には「年金だけでは地獄の老後は必至」等の投稿もあり、老後資金に対して様々な提言をされている。

参考意見としてご覧ください。

 

以上は厚生年金も受給できることを前提としています。

夫婦共に自営業の場合で、国民年金のみを受給する場合には、約11.3万円となるので年金だけで生活することは困難です。

つまり自営業の場合は国民年金基金及びiDeCo(個人型確定拠出年金)等の自分年金を備えるのは必須です。

国民年金基金は、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして加入できる公的な年金制度であり、iDeCoは、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度で、掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで掛金を運用します。

掛金分の所得が控除される等の優遇措置があり利用するメリットは大きい。

自営業なので定年はありませんし、働く時間等も自分で決めることができ、死ぬまで働くという選択肢もありますが、残念ながら、年齢を重ねると思うように働けなくなるのも事実で体力が落ちると気力も湧かなくなります。

 

そこで大事になるのが健康寿命です。

男性72.68歳、女性75.38歳

健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されており、介護などを受けずに健康的に社会生活が送れる期間で、厚生労働省が、3年ごとに全国のおよそ20万世帯を抽出して調査し、推計値を公表しています。

平均寿命と比較すると男性で約8.7年、女性で約12年の差があり、この期間が長くなりますと、医療費や介護費が増加することになり家計を圧迫します。

どのように健康を維持するのかは、工夫次第ですが、働くこと、社会的地位を維持することなども収入を得ながら健康を保つ要因になると考えられます。

 

なお本年4月から年金手帳が廃止されました。

新たに公的年金の被保険者となる人には、年金手帳に代わり、「基礎年金番号通知書」が発行されます。

年金手帳は、基礎年金番号を本人に通知し、公的年金の加入歴や保険料納付状況を証明するものとして発行され、1974年11月からはオレンジ色、1997年1月からは青色の表紙でした。

かつては多くの手続において年金手帳の添付が求められていたので、廃止すると聞いて大丈夫かと心配になりますが、公的年金の加入情報をオンラインシステムで管理するようになり、現在は行政手続きの簡素化および利便性向上の観点から、必ずしも求められなくなっています。

また企業等が厚生年金保険の加入手続きを行う際も、個人番号を記載して届け出た場合には基礎年金番号は不要となっています。

余談ですが、年金手帳は新規・再発行合わせて約227万件発行され、2.7億円のコストがかかっていた(2016年度実績)ため、今回の廃止は行政事務の効率化に寄与しそうです。

とはいえ、今ある年金手帳は保管して下さい。

既に公的年金制度に加入している人、すなわち年金手帳を持っている人には基礎年金番号通知書は発行されませんので、引き続き、基礎年金番号を確認する書類として使用できるためです。

年金手帳をなくしてしまった場合には再交付を申請することができますが、今後は手帳の再交付はされず、基礎年金番号通知書が発行されます。

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