2022年1月

今年は年金・相続で大きな改正があります。

人生100年に備え資産を増やすために改正内容を踏まえて、ライフプランを検討することをお勧めします。

また相続で揉めている場合には、期限が定められ法定相続分で分けることになりますから、解決するための話し合いが大事になります。

1.年金の改正(本年4月から10月)

① 年金の繰り下げ受給の上限が70歳から75歳に延長されます。

年金の繰り上げ受給の減額率が0.5%から0.4%へ縮小されます。

年金の繰り下げにより、年金額は毎月0.7%増額しますから、これまでは65歳からの受給を70歳へ繰り下げることで42%増額となりましたが、これを75歳まで繰り下げた場合には、84%の増額となります。

これを国民年金に適用した場合、令和3年度は約78万円なので、70歳繰下げで約110万円、75歳繰下げで約143万円となります。

年金額が増えますと税・社会保険料も増えますから、手取り額は少なくなりますが、増額された年金額が終身続く安心感は大事です。

また何らかの事情で60歳から受給する場合、これまでは0.5%×60カ月=30%の減額が0.4%×60カ月=24%の減額となりましたから約546,000円が約593,000円に増えます。

 

この繰下げ、繰り上げは1回申請すると、その後事情が変わっても変更することは出来ませんが、いつでも申請できるというメリットがあります。

退職金があるので65歳からの受給を繰り下げている方が、67歳になったところで受給したい場合には、その時までの月数×0.7%が増額されて、以後終身で同じ金額を受取ります。

月に0.7%、年間で8.4%も増えるのですから、ライフプランを検討する際のポイントとなります。

② 在職老齢年金の減額基準が緩和されます。

現時点は、年金の支給繰り上げをしながら働いている60~64歳までの方は、賃金と年金受給額の合計が月額28万円を超えると、超過分の年金の支給が停止されていましたが、改正後は年金の支給停止の基準額が月額28万円から47万円に緩和されることになりました。

65歳以上で働きながら年金を受給している方は、もともと基準額が47万円となっており、変更はありませんが、65歳以上の方は、在職定時改定(働くシニアの年金が毎年増える)が行われます。

現時点は65歳以上で在職中の場合、退職時または70歳到達時に年金額が改定されるまでは年金受給額が変わりませんでした。しかし、今回の改正で、65歳を過ぎてからも働いている場合、毎年10月に保険料の納付額をもとに年金受給額を見直し、年金額の改定が行われることになりました。

働いた分が年金額に反映されるのは働く意欲を向上させますし、長く働くメリットを感じることができます。

③ iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)の加入上限年齢が60歳未満から65歳未満へ拡大

イデコは、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度で、加入は任意です。

イデコは、自分で申し込み、掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで掛金を運用します。 掛金とその運用益との合計額を給付として受け取ることができますが、毎月の掛金を所得控除することができる、運用中の利益が非課税になる、年金受給時の税負担も軽くなるなど税制上の優遇措置があります。

公的年金の補完として重要な制度なので、加入をお勧めしていますが、50歳台となりますと期間が短すぎて株式投資等には不適でした。

その場合でもイデコは、定期預金等も対象商品なので節税メリットを考慮するとお勧めです。

価格変動がある株式投資(投資信託)では最低でも10年超の長期投資が適していますので、今後は50歳台の方にも株式投資(投資信託)をお勧めし、運用益の拡大が見込めます。

  • 企業型確定拠出年金(DC)の加入可能年齢の引き上げとイデコとの併用が容易に。

加入可能年齢の上限が70歳未満となります。(当該企業での規約の定めが必要)年金の受取開始時期も上限が75歳となります。

これまでは当該企業での規約で、企業型DCとイデコの併用が認められている場合のみイデコが利用できましたが、規約による定めが不要となりました。

これにより年金の上乗せが容易になります。

  • 短時間労働者の厚生年金加入が可能になります。

アルバイトやパートなどの短時間労働者は、年収が130万円未満であれば、公的年金や健康保険などの社会保険料の負担は不要です。

結婚しており、夫が会社員や公務員であれば、年収130万円未満の妻は、国民年金の第3号被保険者として国民年金保険料の負担は必要ありませんし、健康保険も、夫の健康保険の被扶養者となるので保険料負担は無いため、収入を

130万円以内としている人は多いのですが、老後に受け取る年金は国民年金のみとなります。(夫が死亡した場合には遺族年金を受給します。)

ただし今でも「従業員数500人超の会社」「週労働時間20時間以上」「月額賃金8.8万円以上(年収約106万円以上)」の人は、勤務先を通じて厚生年金保険や健康保険に加入しなければなりません。

今回の改正では、「従業員数500人超の企業等」の部分が、「100人超の規模の企業」となり、2024年10月からは「50人超の規模の企業」と、段階的に拡大されます。

厚生労働省による推計では、新たに65万人が厚生年金保険や健康保険に加入することになるようで、国民年金のみの加入だった人が、厚生年金にも加入できるようになるメリットはあると思われます。

但し、事業主の社会保険料負担の増加や、パートの手取り収入の減少など、デメリットもあります。

 

2.相続制度の改正(2023年・2024年)

① 遺産分割協議に期間が設定されます。

親が亡くなって遺産相続が生じた場合は、法律が定める範囲の人(相続人)で遺産を分け合うことになります。

遺産には、預貯金や実家の土地・建物、株式などの有価証券も含まれるため、誰が、どの財産を、どのくらいの割合で相続するのかについて話し合う必要もあり遺産の分割について、相続人が集まって話し合うことを「遺産分割協議」といいます。

相続は争続とも言われますが、遺産相続におけるトラブルの多くは、遺産分割協議にかかわるもので「自分の権利ばかりを主張する相続人がいる」、「話し合いに応じない相続人がいる」などで揉めます。

これまでは期限が無かったのですが、相続開始から10年を経過すると、原則として民法で決まっている法定相続割合で分けることになります。

② 土地・建物の相続登記が義務となります。

土地・建物を相続しても登記するか、しないかは任意でしたが、相続開始から3年以内に登記する義務を課し、登記しないと10万円以下の過料となります。

登記簿には所有者不明土地が多く、その面積は約410万ヘクタール(九州本島が約367.5万ヘクタール)と膨大にあります。

前述の相続分割協議が揉めて放置されていることや、相続人が誰も欲しくない土地なので放置されているなども要因なので、期間を定め義務を課することにより、所有者不明土地の発生を予防し解消することが期待されます。

③ 相続で取得した一定の要件を満たす土地を国が引き取ります。

土地は相続したものの、その土地を利用する予定もなく不要な場合には、幾つかの要件はありますが、国庫が引き取ります。

但し、この場合には管理のための10年分の負担金を納めます。

 

重要なのは、今回の法改正が施行日前に発生した相続も対象にしていることです。

猶予期間等も設けられますが、揉めたまま既に何年も経過しているケースも少なくないと思われ、早めに解決することが良いと思います。

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