2021年12月

若い時には年末を迎えると新年度の抱負を考えたことがあると思いますが、今でも考えていますか?

現実には、家のローンがたくさん残っているとか、子供に金が必要だとか、親の介護が必要になりそうだとか、抱負を考えている場合ではないかもしれませんが、考えなければならないのは、今後の生活をどうするのか?と何歳まで働くのか?です。

 

今後の生活については、このコラムで複数回取り上げていますがライフプランニングを検討して下さい。

40歳超であれば、生涯独身なのか、結婚している場合もお子様の人数が固まり教育の方針も定まり、住居についても持ち家、親と同居などに目途が立っているはずですから、一度ライフイベント表を作成して長い将来を見据えることをお勧めします。

 

既に定年を迎えた人たちを見ると、生活はギリギリだがなるべく年金の範囲内で静かに暮らしている人も沢山います。

趣味や生きがいを求めるのであれば、ライフプランを検討し必要なお金については、シニアでも働けるように資格を取得して働いている人もいます。

公的年金以外に企業年金を得ている・又は遺産により余裕ある生活をしている人などもいますが、労働力調査(総務省統計局2018年)働く高齢者のレポートでは、65歳以上の高齢者で働いている人は862万人でした。

比率でみると就業率は24.3%(男性33.2%、女性17.4%)で、主要国と比較すると韓国の31.3%に次いで第2位、第3位はアメリカで18.9%、以後、カナダ、イギリス、ドイツ、イタリアと続きます。

その後も高齢者の就業率は上昇しており日本の数値のみですが、2019年24.9%、2020年度に25.1%となっています。

そもそも公的年金だけでは生活できない人、または今後公的年金の限界により受給金額が減少することを想定する人は多く、今後も就業率は上昇すると思われます。

 

公的年金については、2021年12月7日の日経新聞によると平均寿命が全世界で延びており、公的年金が限界を迎えていることが多くの国の悩みとなっていると指摘しています。

先進国は少子高齢化を背景に年金受給開始年齢の引き上げやシニアの就労期間延長に取り組んでおり米国・ドイツが67歳、イギリス68歳、日本は65歳ですが、2021年4月に70歳まで働ける機会を設けることを企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法が施行され、60歳だった定年を延長したり、65歳を超えても雇用したりする企業が増えている状況で、環境が整えば受給開始年齢を引き上げると想定しています。

 

イタリアでは2019年に62歳からの支給としており、結果として公務員ら11万人以上が駆け込みで早期退職しており、しかも公的年金の給付水準は現役時代の8割弱で日本・ドイツの約2倍となっており主要国43カ国で最も持続性が危ういとの指摘があります。

 

日本の厚生年金は昭和16年に制定された「労働者年金保険法」により、年金制度ができましたが、このときの被保険者は男性のみで受給開始年齢は55歳でした。

昭和19年に名称が厚生年金保険法と改称され、被保険者の範囲が女性へと拡大され、受給開始年齢は男女ともに55歳でした。

昭和29年に厚生年金保険法が全面改正され、男性の受給開始年齢が55歳から60歳に変更されましたが、一度に変更されたのではなく4年に1歳ずつ、昭和32年度から16年かけて引き上げられました。この時に女性の受給開始年齢は据え置かれ55歳のままでした。

昭和60年の改正で、男性の受給開始年齢は60歳から65歳に、女性の受給開始年齢は55歳から60歳に変更されました。ただし、男性については60歳から65歳まで特別支給の老齢厚生年金を受給できる、女性については3年に1歳ずつ、昭和62年度から12年かけて引き上げられるというものでした。

平成6年の改正では、老齢厚生年金の定額部分についての引き上げが行われています。受給開始年齢は、男女ともに60歳から65歳に引き上げられましたが、男性の場合は3年に1歳ずつ、平成13年度から12年かけて、女性の場合は3年に1歳ずつ、平成18年度から12年かけて引き上げられました。

この後も改正は続きますが、段階的な運用により受給者・受給予定者に丁寧に対応していることが分かります。

加入条件

厚生年金

会社員・公務員等社会保険の適用事業所で働いている人

国民年金

国内に居住する20歳以上60歳未満全員

日本の公的年金制度

 

年金は2階建てと言われていますが、1階部分に当たる日本の国民年金は、昭和36年に国民年金法が施行され、受給開始年齢は65歳であり、現在まで変更はありません。

 

働く高齢者の実態については、日本労働組合総連合会による「高齢者雇用に関する調査」(全国の45歳~69歳、千名を対象に、2019年12月18日~12月20日の3日間でインターネットリサーチにより実施)が参考になります。

60歳以上の人(400名)

1日当りの労働時間=8時間(42%)最多、平均6.8時間

雇用形態別では、正規雇用者8時間、正規以外6.3時間

1ヶ月の賃金(税込)=5万円~10万円未満(20.0%)

15万円~20万円未満(19.3%)

20万円~25万円未満(20.5%)

平均18.9万円

正規雇用者33.1万円、正規以外13.0万円

 

このコラムの2020年2月「貧困老人対策」で記載済ですが、

給与が半減したとか、自分の後輩が上司になったなどという程度で延長制度を利用しない場合には、大幅に収入が減る可能性が高いです。

具体的にはハローワークへ行ってみる、または地元のタウン誌等で高齢者の雇用条件を確認してください。

人手不足の影響で以前よりは条件が良くなりましたが、何らかの技能を持っていないのであれば月に20万円の収入を得るのは大変です。

例えば時給1,000円であっても9:00~17:00(昼休み1時間)7時間/1日当り 7,000円ですから、休みなしで30日働いても21万円。

新しい職場で慣れない仕事で更に年収は大幅ダウンという事例は多いのです。

雇用延長の場合には、月に20万円以上が得られる可能性があると思いますので、今の会社の延長制度を活用することをお勧めします。

 

働いている会社で雇用延長制度を取り入れているのなら、色々な理由はあれども働く期間を延長する方が、収入が高いのは前述の通りです。

とはいえ、働いている会社の定年が65歳のままで自分としては70歳まで働きたい場合で且つそれなりの収入を得たい場合には、準備が必要です。

仕事は仕事として全うしながら、今の仕事に関連して資格を取得するのは有効な方法で、長年働いた職種の延長線上で仕事を継続することで、収入を得る可能性は高くなります。

また少子高齢化の進展に伴い15歳から64歳までの生産年齢人口が、1995年の

8,7166万人から下降しており、高齢化率は28%台となっている現状では人手不足が常態化し、シニアの活用は必須ですから、定年を迎える前に、新たな技能を習得することにより転職や起業・独立などにより働くことも以前よりはハードルは低くなっています。

 

注意して頂きたいのは、士商法です。

ファイナンシャルプランナー(FP)、行政書士、司法書士、中小企業診断士などの資格を取得すれば収入を得られると勘違いされている方が少なからずいます。

これらの資格を取得するには時間と気力と勉強が必要ですが、資格を取得しても顧客がいなければ収入を得ることはできませんから、顧客開拓が必要です。

日本FP協会の調査では、独立系FPの平均年収は約300万円。労働者の平均年収

441万円(民間給与実態調査:平成30年)より大幅に少なく、廃業するケースも珍しくありません。

顧客開拓のノウハウを持っている、または既に顧客の目度があるのなら別ですが、技能を習得する場合にはハローワークの公共職業訓練、求職者支援訓練等は無料で受けることができますし、その後の就職にも役立ちます。

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