2021年7月
2022年度からは、高校の新学習指導要領に「資産形成」が組み込まれます。
また日経新聞(2021年5月28日)に「つみたてNISA口座増加、主役は20~30代 年金不安で」という記事がありました。
「つみたてNISA」と呼ばれる少額投資非課税制度の専用口座開設が急増している。この制度は、金融庁が2018年に創設した。投資信託を長期にわたって毎月定額購入する積み立て投資を促進するのが狙いだ。購入額の上限は年40万円。投信の売却益と配当からなる運用益への課税が20年間免除される。
金融庁が3月に発表した速報値によると、つみたてNISAの専用口座数は20年12月末時点で300万を突破。創設1年目の18年末から2年で約3倍に増加した。つみたてNISA口座による投信の買い付け額の合計は、20年末時点で6,878億円。
18年末時点の約7.4倍に拡大した。
つみたてNISAの特色の一つは、投資の対象が信託報酬などのコストが低く、分配金を頻繁に出さないといった金融庁の基準を満たす投信に限定されている点だ。
20年12月23日時点で、193本が運用の対象になっている。
資産形成を図る上で、ポイント1は「非課税制度」の活用です。
同じ商品を購入して1年後に100万円が110万円に増えたので売却した時に、非課税であれば110万円を受取りますが、課税の場合は運用益10万円から2万円(20%)が差し引かれます。
ポイント2は「長期投資:複利効果」です。
前述のつみたてNISAは、毎月定額で投資信託を購入しますが、投資信託は半年・一年経過すると配当金がありますが、この配当金は非課税なので全額再投資されます。
購入した投信の配当金が再投資されることにより元金+利息が利息を生むことを「複利効果」と言いますが、配当金が100円出た時に100円が再投資されるのと、課税されて80円が再投資されるのでは、長期投資の場合に大きな差が出ます。
例えば、運用利回りが1%と聞いた場合に、たった1%と思われるかもしれませんが、毎月3万円を積み立てた場合に、一番最初の3万円は20年後に6,606円の運用益となりますが、課税された場合には5,183円となり、その差額は約1,400円以上にもなります。
運用利回りが仮に3%だった場合には、一番最初の3万円は20年後に24,183円の運用益となりますが、課税された場合には18,208で、その差額は5,975円に拡大します。
運用利回りが大きい場合には、このように差額が拡大しますから、「非課税」&「長期投資」のメリットを生かすには、投資する「銘柄選択」がポイント3となります。
つみたてNISAの投資対象は、コストが低く、分配金を頻繁に出さないといった金融庁の基準を満たす投信193本(20年12月23日時点)限定されていますので、当社の所属証券であるSBI証券やエース証券で銘柄を選択してください。
とは言え銘柄を選択するのは難しい。
分かりやすいのは、「コストが低い銘柄を選ぶ」というやり方ですが、コストはリターンとの見合いで考えるべきで、コストは低いがリターンも低いのであれば収益は増えません。
であれば、日本株を運用する投信、先進国株式を運用する投信、債券を重視する投信などに銘柄を分けることにより、リスクを分散し安定的に収益を得る方法が考えられます。
ポイント3は「長期投資・価格下落時に相対的に沢山の資産を購入」
つみたてNISAで投資するのは、金融庁の基準を満たす投信です。
特定の銘柄であれば一方的な値下がりもあり得ますが、複数の銘柄で構成されている投信であれば価格は上下に変動するのが一般的です。
相場下落時にも定額で投資することにより、多くの投信を購入できますから、相場上昇時には、より多くの利益を得る可能性が高くなります。
ポイント4は「運用状況の確認と解約する決断」
つみたてNISAは20年という長期の期間が設定されていますが、投資を開始してから10年経過後は、積立投資の成果である「現在価額」「評価金額」(証券会社によって表現は変わりますが、積立てたものを今解約すると幾らになるのか)を、最低でも月に1回は確認して、利益を得ている状況で解約することをお勧めします。
10年経過後と書きましたが、この10年という期間に根拠はありません。
毎月の積立額が10年経過で、まとまった金額になっていること。
複利効果や継続投資の成果も重なり利益を得やすくなっていること。
から、投資の成果を回収する目度として10年としましたが、一定期間以上経過したら運用成果を確認し、成績次第で解約する決断は必要です。
なおパソコンは苦手という方であっても、SBI証券のつみたてNISAは運用成果等を書面で郵送してきますし、内容も見やすくなっていますから、そこで運用成果を確認してください。
投資初心者が間違えやすいのは、つみたてNISAを止めることです。
つみたてNISAを初めて1・2年経過したけど、新聞には景気後退とか株価下落などの記事が多く、このまま続けたら損失がドンドン大きくなる!と思って、損失を被っているにも係わらず解約して現金を受け取る人がいます。
つみたてNISAでは、金融庁の基準を満たす投信であり、例えば世界株式のインデックスは下落する局面はあるものの基本的には右肩上がりですから、20年の期間においては利益を得る価格まで上昇する可能性は十分にあります。
しかしながら既に19年間投資して、過去に十分利益を得ていたが現時点では利益が出ておらず更に下落する可能性が高いなどという局面もあるかもしれません。
このような場面では即解約もあり得ますが、損失回避のため、そのまま保有するという選択肢もあります。
非課税期間20年を経過すると、NISA口座から課税口座(一般口座・特定口座)に払い出されますが、損失が解消するまで保有して売却した場合には、課税口座であっても税金はかかりません。(利益が出た場合には課税対象となります。)
また積立が一気に課税口座へ払い出されるのではなく、例えば2030年に積立てた分は2050年まで非課税で保有しますから、再度利益が出るまで待ってから売却することで非課税のメリットを得ることができます。
最後に、相続税について記載します。
筆者は、資産1億円程度であれば相続税対策は不要と考えています。
相続税対策とは別に遺言は必要であり、認知症対策等による家族信託は必要です。
相続税は、所得税などと比較すると控除額が大きく、税率も低いのです。
基礎控除額が3,000万円+法定相続人1人当たり600万円と大きいですし、1,000万円までの相続であれば税率はわずか10%です。
しかも配偶者には原則として相続税はかかりません。
遺産が1億円ある!という方であっても、仮に配偶者と子供2人が法定相続分通りに相続した場合、遺産1億円の相続税は、配偶者はゼロ、子供2人に対して各145万円(合計290万円)です。
計算事例
1億円-基礎控除(3,000万円+600万円×3)=5,200万円(課税対象額)
配偶者:5,200万円×1/2=2,600万円
相続税の配偶者控除が適用されますので、相続税は課税されません。
(相続税の配偶者控除が適用されるための要件がありますのでご留意ください)
子供1人当たり:5,200万円×2/1×2/1=1,300万円(課税対象額)
子供一人当たり1,300万円×15%(税率)-50万円(控除額)=145万円
145万円×2人=290万円
このように資産1億円であっても290万円の相続税なので、敢えて相続税対策が必要なのか冷静に考えて頂きたいです。
業者は相続税対策として、色々な金融商品を勧めますが、不要なコストを負担したり、結果として損失を被ったりする可能性がありますので、その内容を十分に理解した上で慎重な検討をすると共に、相続税対策をしなかった場合に支払う相続税との比較も必要です。
また相続税対策としてアパートや賃貸マンションといった貸家を持つという選択肢もありますが、これこそリスクが高いと思われます。空室となり家賃が入らないこともありますし、周辺に競合する貸家が建って家賃の引き下げ競争に巻き込まれる可能性もあるあります。
人口が減少している日本では首都圏でも空家問題が拡大しており、10年後、20年後を見据えた場合に多大なリスクを抱える可能性があります。