2021年6月

1.いつまでも働くために

日本企業での働き方は、労働人口の減少や社会の高齢化、そして昨今のコロナ禍が加わり、大きな転換期を迎えています。

今後は、職種や職務の価値によって報酬が決められ、それに見合った経験・スキルを有する人材を配置し処遇する仕組みへとシフトしつつあります。

個々の職務毎に客観的価値に基づいた適正な処遇水準を設定し、最適な人材を配置する。つまり「適材適所」ではなく「適所適材」の考え方に代わっていくと考えられますので、これから長い職業人生を過ごす中高年はこれからのキャリアと働き方を考える必要があります。

 

キャリアと年収について分かりやすいのは、日本型(職能型雇用)と欧米型(職務型雇用)型の比較です。

一般的に、日本型と欧米型では賃金を決める考え方が異なっており、欧米型(職務型)の報酬は外部の労働市場との見合いで決まります。

「このポジションを担える人材を外部から採用する場合どのくらいの報酬水準が妥当か」との比較が賃金を決める重要な要素になりますので、市場価値を高めるための自己投資を行う原動力となり、自己投資で付加価値を身につけた人を、企業が採用することになります。

日本型(職能型雇用)の報酬は企業内の力関係で賃金が決まる傾向があり、従業員のキャリアは社内に閉じたものになりやすく、自分のキャリアを高めるために自己投資を行う従業員は欧米ほど多くありません。

 

しかし日本でも、欧米型(職務型)で報酬が決まるのが、転職するときです。

転職する場合には、外部の市場価値で報酬が決まります。

転職が成功するためには、そのポジションで、期待された役割を果たすことが必要であり、転職先で貢献できる人は更にキャリアアップすることが出来ます。

 

筆者も定年退職を前倒しして個人事業主になったので理解していますが、定年後再雇用されたにも係わらず、前向きにならずお荷物になっている人が少なからずいます。余計な仕事を増やしたり、時代錯誤の経験則を押しつけたり、そもそも職務遂行に必要な知識が足りないなど、再雇用時の職務すら満足にできないだけでなく職場に悪影響を与える人たちです。

 

このような人たちは、日本の定年雇用制度と年功型賃金制度の産物で、一定の年齢に達すると再雇用や退職となり、それまでの報酬が一定の範囲内で決められる仕組みに安住してキャリアアップしてこなかった人たちです。

しかし今後は、年齢よりも能力に応じて処遇される雇用形態へ移行すると思われます。

 

既に言われていることではありますが、自分のキャリアをどのように作って行くのか?

基本的には、現時点で考えられるキャリアのゴールを設定し、知識・スキルを蓄積しながら担当している仕事にまい進することだと思います。

仕事は適当にやりながら〇〇〇診断士などの資格取得に取り組み、実際に独立した人たちを複数知っていますが、資格取得は、その仕事を開始するための入場券であり、継続して仕事を貰えるとは限りません。

そもそも仕事が適当だった人が行うアドバイスに説得力はありませんし、実務家としても顧客が望む範囲まで気配りできません。

仕事にまい進し熱中することは大事で、仕事に熱心であるが故に、この人なら信頼できると周囲から認められるようになることがキャリア育成の前提だと思います。

 

2.投資

健康で意欲があるのなら、いつまでも働くことができますが、加齢と共に体力・気力が衰えるのも事実です。

ある程度のお金があるのなら、もう働きたくないと思うのも分かりますし、自分は働きたくないが、もう少しお金が必要な場合には、お金を運用してお金にお金を稼いでもらう=投資を考えるのも一案です。

 

投資初心者がいきなり株式やFX、暗号資産などに投資するのは危険なので、先ずは投資信託をお勧めしています。

投資信託とは、多くの人たちから資金を集めて、プロのファンドマネージャーが株式や債券などで運用する金融商品のことです。

投資信託は、インデックス型とアクティブ型に大別されますが、初心者にはインデックス型が理解しやすく、有名な日経平均株価やTOPIXなどの指数に連動するように機械的に運用するものです。

日経平均株価に連動するということは、東京証券取引所第一部に上場している225社の株価に連動するということなので、ニュースで株価が下落した=日経平均株価が下落したときには投資信託の価格も下落します。

またダウといえば「ダウ工業株30種平均」=ニューヨーク証券取引所・ナスダック市場に上場している主要30社の株価に連動するということで、ロンドン、フランクフルトの各市場も同様です。

投資信託は分散投資して運用している金融商品ですが、日本市場だけでは不安な場合には、先進国や世界全体に分散投資する商品を選ぶことでリスクを抑え世界経済の成長を享受することも可能になります。

 

投資信託を買う場合には、つみたてNISAがお勧めです。

前述の通り、投資信託は価額が変動しますので、購入時よりも価額が下落した時点で売却すれば損失を被ります。

損失を被る可能性はありますが、毎月毎に一定金額を積み立てるつみたてNISAであれば、年間40万円まで非課税で20年間投資可能ですから、平均購入単価が下がりますし、その間に価額を見ながら売却することで収益を得る可能性が高くなります。

筆者の持論ですが、人生100年時代には定年退職者こそ、つみたてNISAをお勧めしています。

つみたてNISAは退職金の運用に適しています。

少なくとも10年間は、運用成績に一喜一憂することなく継続して、その後は、運用状況を月に1回で良いですから確認して下さい。

平均購入単価よりも時価が低い場合には損失を被りますから、運用成績の状況を確認するのは大事ですし、仮にお金がどうしても必要な時には必要な分だけ一部解約することをお勧めします。

値下がり時には、より多くの投信を購入しますから、ドンドン平均単価が下がるので、後に利益を得る可能性が高くなります。

勿論、自分の目標金額に達した場合や、一定の年齢に達した場合など、自らが決めた水準で解約し投資を終了することも大事です。

3.家計費の把握と改善

奥様が家計簿をつけている家庭は多いのですが、FP相談で年間の収支を確認すると不明な家庭は多いです。

年金生活となれば収入増加は見込めませんし、今後、医療費の増加や新たに介護費用が必要になるかもしれないのに、そもそも税金や社会保険料を含めた総勘定を把握していないのです。

 

退職金は〇〇〇万円ある。

年金は厚生年金と夫婦2人の基礎年金を合計すると〇〇万円ある。

家のローンは終わったし、子供は自立している。

そして自分たちは健康で時間もあるので、長年の趣味や旅行を楽しんでいる。

で、10年が経過すると

退職金は、ほとんど残っていない。

年金は予定通り貰っている。

しかし家の修理に〇〇〇万円が必要だし、車も買い替えなくてはならない。

夫婦共に数年前から体調が悪化し、妻が痴呆症気味となり家事が疎かになりゴミ屋敷のようになっている。

いかにもありそうな事例ですし、老後となれば修正するのは大変ですし難しい。

 

今すぐ対応できるのは、夫婦が揃って問題意識を持つことと銀行口座を1つ(奥様も1つ)にすることです。

入金:年金などは本人口座への送金なので、夫婦それぞれ1つで2つ

但し、1つは年金専用で年金入金額を全額引き出して残高をゼロにしておく

出金:電気、ガス、水道、ケーブルテレビ、固定資産税等々を1つの口座にまとめるのは面倒かもしれませんが、要するに、食費・医療費・交際費等を含め支出を1つの口座にまとめることで年間の収支が把握できます。

 

家計簿アプリを勧めるFPもいますが、筆者は懐疑的です。

家計を把握することも必要ではありますが、大事なのは、使える資産残高の把握と今後の収入・支出(特に住宅ローン等が残っている場合には、これの解消が重要)の把握と、夫婦それぞれの年齢による平均余命まで生きることを前提とした生活費についてお互いに認識することです。

先月には夫死亡後の妻の生活費について記載しましたが、それらを含めて、夫婦で月当りの支出総額を決めて、その範囲内で食費・交際費等の具体的な金額を決めることが大事です。

そして残念ながら金額内で収めることができないことが多いのです。

しかしできないことが多いのですから、そこで諦めないで、どうしてできないのか相談して、どの支出を減らすのか、何を諦めるのかを決めなければなりません。

 

実際には問題を先送りにする人もいますが、先送りしても何も解決しませんから面倒でも取り組むしかありませんし、ここで家計簿アプリ等を活用して何を減らすのか具体的に考えることが必要となります。

また年金などは税金・社会保険料を天引きしていますから、これらの金額も含めて支出総額を把握するためには、家計簿はつけた方が良いです。

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