2020年 3 月

1月から年金や老後資金をご案内しましたが、来月からは、ドルコスト平均法などの投資手法や株、債券、保険などお金を貯めるための「やり方」に関することを3回連続する予定です。

 

先ずは次の3表をご覧下さい。

 1.金融庁の金融審議会「市場ワーキンググループ」が提示した老後の必要資金

必要資金総額 2,000万円
必要資金/月 未提示 毎月55,000円の赤字
死亡年齢 男性(夫):95歳、女性(妻):90歳
  • 夫65歳、妻60歳の時点で夫婦ともに無職
  • 30年後(夫95歳、妻90歳)まで夫婦ともに健在
  • その間の家計収支がずっと毎月5万円の赤字

55,000×12×30=19,800,000円

 

2.(公財)生命保険文化センター「平成28年度 生活保障に関する調査」

必要資金総額 未提示
必要資金/月 最低日常生活費 平均220,000円
  ゆとりある老後生活費 約349,000円
死亡年齢 未提示

単純に月毎の必要資金を提示して、後は自分で考えて下さいというものです。

 

3.当社において、平成30年(2018年)「家計調査報告(家計収支編)」(総務省)を基に算出した老後の必要資金

必要資金総額 13,301,962円
必要資金/月(夫婦) 235,615円 毎月41,872円の赤字
必要資金/月(単身) 149,603円 毎月38,670円の赤字
死亡年齢(平均寿命) 男性(夫):81.25年、女性(妻):87.32年

 

高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上:夫婦:無職)家計収支(1カ月)

  • 可処分所得  193,743円
  • 消費支出    235,615円
  • 赤字       41,872円

高齢単身無職世帯(60歳以上の統計しかありませんので、こちらを使用します)

  • 可処分所得 110,933円)
  • 消費支出    149,603円
  • 赤字       38,670円

最新2018年の平均寿命 男性81.25年、女性87.32年

  • 夫婦2人の期間

(81.25-65)×41,872×12=8,165,040円不足

  • 奥様一人の期間

奥様は5歳年下と仮定しますと夫死亡時奥様は78.25歳

(87.32-76.25)×38,670×12=5,136,922円不足


1と3では大きな差がありますが、出所は同じ統計を使用しています。(年度は違います。)

金融庁は、平成29年(2017年)「家計調査報告(家計収支編)」(総務省)

当社は、平成30年(2018年)、双方数値は正しいのですが、平成30年は平成29年より可処分所得が12,785円も増えたこと、更に金融庁前提では平均寿命より大幅に長生きするのですから、このような数値となります。

結論:老後の必要資金に正解はありません。


次に、どの程度の貯蓄額があるのかですが、こちらも統計は複数あります。

総務省 家計調査報告 高齢者二人以上の世帯における2018年平均の1世帯当たり貯蓄現在高(平均値)は1,752万円

内閣府令和元年版高齢社会白書 世帯主の年齢が60歳以上・二人以上の世帯の中央値は1,639万円

 

貯蓄額では、各統計に大きな差はありませんし、どれを使っても、当社が算出した必要資金額を上回りますが、この結果を見て安心されるでしょうか?

残念ながら安心される方は少ないでしょう。

前述の通り、必要資金に正解はありませんし、可処分所得の原資である年金支給額は減少するでしょうし、自分には持病があるし、両親には呆ける気配があるなど、収入は減少し支出が増える可能性ばかりが気になります。

 

しかしながら生活を切り詰め、食べるものも我慢して、やみくもに貯金しましょうでは乱暴過ぎます。

やはり必要資金額を見積り、節約すべきは節約し、リスクを考えながら投資することで目標金額を貯めることが大切ですから、最初に3表をご提示しました。

 

では、何から始めましょうか?

お勧めFPや銀行・生命保険会社と相談して資金計画表を作成しましょう!!

日本FP協会には、相談料無料のFPが沢山登録していますし、保険会社の担当者へ保険を検討しているので資金計画を相談したいと依頼することもできます。

しかし、そこで最初に問題になるのは、そもそも家計を把握していないという事実です。

相談しようにも、何にどれくらい使っているのか分からない。

奥様任せで奥様は家計簿をつけているはずなのに、数字の羅列で整理していない。

何となく毎月幾ら使っているかのイメージはあるが、冠婚葬祭や車検費用などを含めた1年間を通した数字は把握していない。

更に言いますと、貯蓄額の現在高は分かっても、昨年と今年で、どれだけ増えたのか減ったのかを把握していない。

にも係わらず、何となく不安だけは感じているという人が多いのです。

① 1年間の収入と支出を把握すること。

1月ではありません。最低でも1年です。これが分かればFP相談を開始することができます。

 

次は、将来受け取る収入、つまり年金額を把握することです。

一例として、年金を65歳から受給するのではなく70歳まで繰下げすると42%も増えます!という案内はありますが、この場合には「配偶者加給年金」は受給できません。

簡略に記載しますと厚生年金の場合、ご主人65歳、奥様60歳の場合、5年間に渡り390,100円/年追加されます。

 

計算例:厚生年金受給額150万円とします+老齢基礎年金780,100円(本年度)
・両方を70歳まで繰り越した場合、65歳から70歳はゼロ

70歳以降の受給額=(150万円+780,100)×1.42=3,237,742円

仮に平均寿命まで生きた場合には、11.25×3,237,742=36,424,597円

・厚生年金は65歳から受給、老齢基礎年金のみを70歳まで繰り越した場合

65歳から70歳=(150万円+390,100)×5=9,450,500円

その後、仮に平均寿命まで生きた場合

(150万円+780,100×1.42)×11.25=29,337,097円

9,450,500円+29,337,097円=38,787,097円

 

② 年金相談へ行くこと。

こちらに記載した内容は、一般論であり正確な情報は日本年金機構のホームページを参照して下さい。

また個別の内容に関しては必ず年金相談にて把握して下さい。

 

③ 最後に、将来の予定を考えて下さい。

両親が生存されている場合には、両親の介護費用を負担するのか、しないのかは重要なポイントになりますし、子供や孫に金銭的援助をするのか。

体が動く限り働くのか、70歳には引退してゆっくりしたいのか。  等々

なお、ご自宅(マンション・一戸建て、どちらでも)を所有されている方は、原則として、そのまま居住されることをお勧めしています。

夫婦二人では広すぎる郊外の一戸建てを売却して売却代金で都心の2LDKを購入して都心ライフを楽しみたい。などと聞きますが、購入代金を控除しても数千万円の残金がある。夫婦揃って健康であり特養などへ入る可能性が少ない。など条件が揃いませんと、割高な管理費・生活費に加え、マンションがファミリー向けでなく管理組合が脆弱などのリスクを負うことになり、老後破綻の可能性が高まります。

 

以上①②③が揃いましたら、FPと相談しながら資金計画表を作り、その実現のために必要な資金を把握し、貯蓄目標額を把握しましょう。その上で、例えば3年毎や5年毎にプランや資金、目標貯蓄額の見直しを繰り返し行い、思い描く将来のために微調整しながら準備を進めましょう。その過程で、お金以外に必要なこと、例えば人のネットワークや健康維持、資格取得、などへの対策もたてることができます。将来資金の準備は豊かな老後に必要な「生きがい、お金、健康」の準備にも繋がります。

 

 

※注記:2月に平成29年度の<高齢夫婦世帯の支出(月平均額)>として263,717円としています。

一般的に税金、社会保険料なども支出のはずですが、統計資料では消費支出と非消費支出に分けて消費支出235,477円を必要資金/月(夫婦)としています。

統計資料をご覧になる際にはご留意ください。

 

【統計資料】2月資料 高齢夫婦世帯の支出

実収入 209,198円
社会保険料等 28,240円
可処分所得 180,958円
消費支出 235,477円 合計 263,717円
非消費支出 28,240円

 

以上

前の記事

2020 年 2 月

次の記事

2020年4月