2021年11月
生活に大きな影響を与えた新型コロナですが、感染者数が減少し、注意は必要なものの飲食店の営業時間等も正常化しつつあります。
しかし日本の抱える問題である少子高齢化、経済のグローバル化等は何ら解決しておらず、少子高齢化では既に高齢化率で世界1位となり、関連して空家問題では近い将来に2,000万戸と予想され、その他、介護離職、独居老人の増加、限界集落、社会保障費の拡大など何れも大きな問題です。
このような状況で老後の資産管理を考えますと、先ずは支出を管理することから考えますが、大きな支出とは、①日常生活費、②医療・介護費用、③住居改修費又は住宅ローンの返済と車の買い替え等です。
1.日常生活費
公的年金でまかなうことが理想ですが、「令和2年度の年金額改定のお知らせ」によると、令和2年度の厚生年金のモデル支給額は22万0724円となっていて、この金額で余裕ある生活は難しいと思いますが、出費を抑えることは必要です。
筆者はFPなので色々な相談を受けていますが、老後になっても生活スタイルを見直しできない人は多いのです。
老後の収入の下落率は人それぞれであっても、その収入に合わせて生活スタイルを変えることができる人は老後破産にはなりませんが、高収入だった人は収入に合わせて使うので、節約に慣れている人よりも貧困になる可能性は高くなります。
一番大事なのは意識を変えることですが、これが出来ません。
筆者の経験では半分以上の方が、収入は減っているのに、それまでと同じ生活を送っています。
収入の範囲内で生活するという当たり前のことが出来なければ、お金はドンドン減ります。
(モデル支給額は、専業主婦家庭を想定し、平均標準報酬(賞与を含む月額換算43.9 万円)で 40 年間働いた場合に受け取ることのできる年金(本人分の老齢厚生年金と夫婦2人分の老齢基礎年金)の給付水準)
あくまでも生活費に限定すれば、出費を抑えることで、公的年金だけでも可能ではありますが、50歳代であれば自分の年金を増やすこともできます。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用(節税できる個人型年金制度)
メリットは、積立掛金に応じて所得税・住民税が軽減され、受取時にも税制優遇を受けることができます。
デメリットは、積立掛金に制限があること。満期時まで引き出すことができないこと。
現時点は加入年齢(掛け金を積み立てできる年齢)が60歳となっていますが、2022年5月からは、会社員や公務員として働き続けると(国民年金被保険者であること)65歳まで延長されます。
iDeCoの掛け金は全額所得控除なので、節税効果は大きいです。
老後資金として個人年金保険をやった場合は、例え大きな金額を積み立てたとしても、所得税で最大年4万円、住民税は年2万8000円しか控除できません。
しかしiDeCoなら、会社の制度によって拠出限度額は決まっていますが、企業年金がない会社の場合は最大年額27万6000円(23,000円/月)が全額所得から控除されます。所得税率が10%と仮定した場合、住民税(10%)と合わせて年間約5万5000円の税負担軽減効果があります。(所得税率が高ければ更に軽減効果があります)
サラリーマンの平均年収は423万円(厚生労働省発表の「令和元年賃金構造基本統計調査」のうち、ジョブメドレーに掲載している17職種(16項目)の平均年収)から基礎控除、生命保険料控除等を差引いて課税所得が350万円の場合に、27万6000円が控除されますと前述の計算式となります。
55歳から65歳までの10年間iDeCoを続けた場合、仮に月に23,000円が年2%の利回りであったとすると276万円の積み立てに対して、約302万円の解約金を得ることができます。(利回り保証ではありません。ご注意下さい)
節税分5万5,000円×10年=55万円との合計で81万円の効果があります。
2.医療・介護関連費用
高齢者になると若い世代よりも相対的に医療費が増えますが、厚生労働省の統計では、65歳から69歳平均で約46万円、70歳から74歳で約60万円、75歳から79歳で約77万円(平成30年度)となっています。
夫婦では倍となりますから、夫婦共に70歳では年120万円=毎月10万円で負担割合2割で2万円が必要です。
また75歳以上は1割負担となりますから、医療費は生活費の範囲内で支払えると思います。
問題なのは、入院や介護が必要な場合には、相当な金額が必要になるのですが、いつ発生するのか、どの程度の症状なのか、どれくらいの期間になるのかが予測できないことです。
高額医療費・高額介護合算医療費制度等の活用は当然ですが、それでも入院等では諸費用が必要なので、日常生活費とは別にまとまったお金を確保すべきです。
まとまったお金といえば退職金がありますが、退職金の使い道を、ある雑誌がアンケートで確認したところ、一番多いのが「貯蓄」で、その次が日々の生活費、次に株や投信などの運用、国内旅行、住宅のリフォーム、住宅ローンの返済等となっていますが、医療・介護関連費用として確保するという意識は低いと思われます。
では、どの程度の金額を確保すべきなのか言うのは難しく、医療・介護に要する費用は千差万別で統計などはありませんが
1,000万円確保しておけば安心と言えます。
例えば、一人で生活するのが厳しい場合には、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、ケアハウスなどの施設へ入居することを検討しますが、要介護のレベルや所得で探す必要があり希望する所へ直ぐに入ることは厳しいので、入居するまでの間は、ヘルパーの派遣や、ショートステイなどを活用するにしても、お金は必要です。
お金に余裕があり民間施設へ直ぐに入居できるのなら簡単ですが、高額の入居一時金を払ったにも係わらず、業者が破綻して一時金が戻らないケースも増えていますし、入居はしたものの、施設が合わなくても他へ移るだけの資金が無く、我慢我慢の日々を過ごすのは苦痛です。
自分や配偶者が高齢者施設へ入居する可能性があることを踏まえて、そのためのお金を確保することと、70歳超となれば、各施設を見学してみるなどの準備をお勧めします。
3.住居補修改修費又は住宅ローンの返済と車の買い替え
住居は、マンション・一戸建ての区別なく補修改修は必要です。
老朽化したマンションの管理組合が契約更新しないケースも増えていますが、毎月の修繕積立金とは別に改修費が、一戸建てには修繕積立金が無いので100万円単位の改修費が必要となります。
生活が便利であれば車は必要ありませんが、車が無ければ生活できない地方では必需品であり、車検費用や買い替え費用を確保します。
上記3つ以外にも冠婚葬祭費用や子供・孫へのプレゼント代などもありますが、筆者が優先するのは、老後生活を楽しむことだと考えます。
4.老後生活を楽しむ
楽しみ方は、それぞれ違いますし、お金が不要な楽しみも沢山ありますが、やはり何かをするにはお金が必要です。
そのお金を働いて得るのであれば一石二鳥で、お勧めです。
前述の①②③を用意した上で、お金が余っているという方でも、働いて稼ぐことに意義があります。(ボランティアを否定するものではありません。)
楽しみに使うお金なので無理の無い範囲で(月に5・6万円くらいを目途)働くことで、社会との関りを保ち長い老後期間を心身ともに充実感を保つことができます。