2021年3月

現在仕事をしている60歳以上の約4割が「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答しています(内閣府の「高齢社会白書」(平成29年度版)。そして70歳くらいまでと回答している人をあわせると約8割の人が高い就労意識を持っています。

どうして70歳まで働こうと思うのか。

第1位 「経済的にゆとりのある生活を送りたいから」  約29%

第2位 「働き続けないと生活費が足りないと思うから」 約25%

半数以上の人が、経済的な理由で働きたいと考えています。

 

自営業であればリタイアは自分で決めますが、会社勤めの場合には会社が定年を決めますので、給与から自動的に差引かれている「社会保険」を活用しましょう。

  • 失業手当と高年齢求職者給付金

65歳で定年退職するのだが、その後も働きたいと考えている人の場合は、64歳11月で退職することで失業手当(失業給付)を受給することができます。

雇用保険料は労働者が1/3、事業主が2/3を負担(事業分類で相違)しており、失業手当(失業給付)は、失業中の生活を心配しないで、新しい仕事を探して再就職をしてもらうための給付金です。「失業手当(失業給付)は、雇用保険上は基本手当」といいます」

65歳未満で退職した場合には、この基本手当が支給されますが、65歳以上で退職した場合には「高年齢求職者給付金」の支給となります。

どちらも受給するためには、失業後に公共職業安定所(ハローワーク)へ離職票を提出し、求職の申し込みをするなど求職活動をすることが条件であり、ハローワークでの手続き後、認定されるまでの待機期間中にパートやアルバイトをしてしまうと、受給されません。

 

64歳11月で退職する場合は、一般的に自ら退職を申し出ているでしょうから、自己都合による退職となり、雇用保険に加入していた期間が、退職前の2年間で12ヶ月以上あることが必要で、且つ、3ヶ月間は失業給付の基本手当を受給できない「給付制限期間」があります。

 

基本手当は被保険者だった期間で支給日数が変わります。

・雇用保険の被保険者だった期間:10年未満=90日

・雇用保険の被保険者だった期間:10年以上20年未満=120日

・雇用保険の被保険者だった期間:20年以上=150日

一方、高年齢求職者給付金は、最大50日ですから、どちらが多いのかは明らかです。

支給金額は、基本手当の場合、賞与を除く退職前6か月の合計を180日で割った金額のおよそ50〜80%です。

例えば基本手当日額が5,000円で、20年以上勤務していた場合には、総額75万円の給付を受け取ることができます(日額5,000円×150日=75万円)。

また年金を受け取りながら基本手当を受けることはできませんから、後ほど記載する年金の繰下げも必要となります。

 

2017年1月の雇用保険法改正によって、雇用保険の被保険者の年齢制限はなくなりました。つまり、70歳や80歳になっても、雇用保険の加入は可能になりましたから(31日以上の雇用見込みがあり、週20時間以上勤務することが要件)、働く意欲がある人は、失業しても、6か月以上の雇用保険加入期間(通算でも可)という条件を満たしていれば、高年齢求職者給付金の支給を受けることができますし、高年齢求職者給付金は一時金となるため年金を受け取りながら受給できます。

65歳の退職時を含めて3回、給付金を受給されている方は、「それほど大きな金額ではないけど、本当に助かる」とのことです。

 

こちらの記載は、なるべく分かりやすくするために詳細を省いていますので、失業手当等の正確な情報につきましては、ハローワークでご確認下さい。

上記記載の基本手当支給日数も会社が倒産した場合や会社都合により離職した場合には最長240日となります。

  • 年金

年金の受給開始年齢は65歳ですが、受給額を減らすことにより早めることもできますし、受給額を増やすために遅くすることもできます。

早くすることを「繰り上げ」と呼び、60歳以降の何時でも月単位で請求できますが、繰上げ支給の請求をした時点に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わりません。

また繰上げ支給の老齢基礎年金は、全部繰上げまたは一部繰上げのどちらかを選べます。

 

減額率は、0.5%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数

 

例えば、60歳時点から年金を繰り上げ受給した場合には、0.5%×60月=30%の減額

となりますから、令和2年の満額781,700円×(100%―30%)=547,190円となります。

満額=20歳以上60歳未満の480月が全て保険料納付済期間

 

例えば、62歳と2月時点から年金を繰り上げ受給した場合には65歳まで2年10月=34月ありますから、0.5%×34月=17%の減額

令和2年の満額781,700円×(100%―17%)=648,811円となります。

 

受給開始を遅くすることを「繰り下げ」と呼び、66歳から75歳までの間に月単位で決めることができ月単位で年金額の増額が行われることになり、その増額率は一生変わりません。

なお、75歳まで繰り下げができますのは、2020年成立の公的年金改正法=2022年施行後となり、現時点では70歳までが上限です。

 

増額率は、0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数

 

例えば、70歳まで年金を繰り下げ場合には、0.7%×60月=42%の増額

となりますから、令和2年の満額781,700円×(100%+42%)=1,110,014円となります。

 

ところで、年金を何歳から受給するのかを人生設計に合わせて選ぶ上で、忘れてはいけないのは、必要書類の提出です。

年金制度は「申請主義」が徹底されていますから、本人が自ら手続きしなければ受け取れません。

 

65歳の誕生日前に日本年金機構から送られてくる「年金請求書」に記載して、65歳の誕生日を迎えてから年金事務所に郵送か窓口に持参すると次の年金支給日から年金が振り込まれますが、請求書を提出しないと、自動的に繰り下げ扱いとなって支給されません。

更に65歳以前に繰り上げ受給したい場合は、請求書が届くのを待っていては間に合いません。

本人が年金事務所にて、「繰上げ請求書」を受取り、年金を受給したい月の前月までに記載して、年金事務所に郵送するか、窓口に持参して下さい。

繰り下げ受給を選ぶ場合は、「年金請求書」を返送せず、何歳から受給するかが決めた時点で年金事務所にて、「繰下げ請求書」を受取り年金を受給したい月の前月までに記載して、年金事務所に郵送するか窓口に持参して下さい。

 

また書類の記載にも十分注意しないと受け取れるべき年金が受け取れません。

 

具体例を上げますと、老齢厚生年金には加給年金という制度があります。

厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あり、本人65歳到達時点で、その方に生計を維持されている配偶者がいるときに加算され、配偶者が65歳になるまで、224,900円(年額)が加算されますから、それなりに大きな金額です。

65歳の誕生日前に日本年金機構から送られてくる「年金請求書」に加給年金額の対象者を記載しなかっただけで加給年金を受け取れません。

FP相談の過程で、加給年金を受け取る権利がありながら、年金額が少ないことに気付かず、そのままになっていることが分かり、所定の書類「老齢厚生年金 加給年金額加算開始事由該当届」を提出することで、遡って受け取ることができました。

 

最後に、注意して頂きたいのは、年金は「5年で時効」となります。

70歳を過ぎても「年金請求書」や「繰下げ請求書」を提出しませんと、遡って5年以上前の年金を受け取ることができません。

 

こちらの記載は、なるべく分かりやすくするために詳細を省いていますので、年金の正確な情報につきましては、「日本年金機構」のホームページを参照するか、年金相談センターや年金事務所の年金相談で確認して下さい。

筆者も予約して行きましたが、分かりやすく丁寧でした。

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