2023年7月

資産形成や老後破綻しない方法などは重要な課題ですが、今回は、少なくとも10年から20年以上になるであろう老後を楽しむことを考えます。

人それぞれに望む老後は違います。

他とのつながりを求めるタイプ。自分磨きといいますか知的好奇心を満たすタイプ。マイペースで一人静かに読書や散歩を好むタイプ。逆に仲間たちと共に遊ぶことを好むタイプ。他にも承認欲求タイプ、現状維持が安心という人や死ぬまで働くという人もいて、楽しい老後は千差万別だし、これだというものはありませんが

共通して一番大事なのは、

 

〇健康であること。

持病はあるし膝や腰が痛いとか毎週通院しているとか色々あるけど、何とか生活できているのなら健康の範疇です。

近年は健康年齢という単語を良く聞きます。

人間ドッグ等の結果で色々な数値(中性脂肪やコレステロール等)を見せられても意味が分からないので、健康年齢という表現に変えて、実年齢よりも健康年齢が低ければ健康であると分かりやすく表現するようになりました。

健康年齢を意識して生活習慣を見直すことも必要かもしれませんが、年相応と言いますか、年齢を重ねれば関節は変形しますし体力は衰えるのが当たり前で、なるべく歩くようにするとか、膝や腰に不安があるのなら市民プール(利用料は500円未満が多い)で泳ぐのも良し、家事は以外と重労働なので家事を分担することで夫婦の負担割合を平等且つ家庭内平和を保つのも一案で、いずれにせよ健康を意識しすぎるよりも楽しみながら運動することで自然に健康になるのだと思います。

自分で生活出来なくなれば要支援や要介護ということになりますから、本年3月に「介護が必要になる」というテーマで対応策を記載しています。

〇人と上手に付き合うこと

周囲との調和を保つのは大事で、配偶者・子・親族であっても我儘で自分本位な人間とは距離を置きます。それは知人や近所の人も同じです。

たまには嫌な思いをするかもしれませんが、何気ないお喋りや、共に笑い共感し合うことで心地よさを感じるものです。

そのためには相手を尊重し互いの距離感を意識し、時には面倒なことをやらなければなりませんが、それが出来ない人は孤独になります。

当然ですが、長年の経験から、自分とは合わないと思う人とは付き合う必要はありません。

生活圏内にいる人たちと上手に付き合うことで気持ちを穏やかに保つことができます。

マイペースと孤独は違います。

「咳をしても一人」尾崎放哉(オザキホウサイ)

破天荒な人生を送ってきた晩年の放哉は、香川県小豆島にある寺の庵に住んでいましたが、酒癖が悪く、金の無心をするなど周囲からの評判は悪く孤立していました。

この頃の放哉は、庵の場所を提供した住職が食べ物を与えるほどに困窮しており、自由律俳句の代表として名を知られてはいるものの、嫌われ者が一人で生活しているという孤独感をありありと感じる句です。

〇他人と比べないこと

一生懸命働いてきたのに貯金が少なく生活が苦しいとか、単身赴任が長かったこともあり家庭内の居心地が悪いとか、配偶者に先立たれて子や孫も寄り付かない等々。

同期や先輩や周囲と比べると自分は何で苦労したり、嫌な思いをしているのか?

考えても仕方ないことで、理不尽なことは沢山あります。

基本的には不平等が当たり前で、他人の生活は自分よりも良く見えますが、人は人・自分は自分と割り切らなければ惨めな気持ちを抱え込むことになり、老人性の「うつ」は認知症につながることも多いのです。

約30年前に赤瀬川原平氏が「物忘れが激しくなった」など老化による衰えというマイナス思考を「老人力がついてきた」というプラス思考へ転換することを提唱しました。

嫌なことを引きずらないで直ぐに忘れることができれば老人力が発揮されているのです。

生きていれば色々ありますが、老人力で乗り切るのも一案です。

〇趣味があること。

お金に余裕があれば旅行へ行ったり、美味しいものを食べたり、何かにチャレンジしてみたり、子供に残そうなどと思わずに使った方が楽しく過ごせますし、あまり余裕な無くとも自分の楽しみのために節約するのも知恵を絞りますから、これも工夫次第で楽しくなります。

家庭菜園やガーデニングも自分で育てた結果を収穫したり、鑑賞できるので満足感は高いと思います。

登山も新鮮で美味しい空気を味わいながら、山の景色で癒されながら、相当な運動にもなるのでダイエット効果も期待できます。

これらに含めて、読書・散歩・俳句などで満足できるのであれば一人でも楽しめますし、仲間がいるのなら更に楽しくなります。

しかし囲碁、将棋、ゴルフ、ギターやピアノなどの楽器、絵画等何でもよいのですが、技術を伴うものは、ある程度のレベルでないと楽しめないし誘われませんから、レベルアップする工夫をしながら継続することが必要です。

レベルアップすることで満足感を味わえるのは、この類の趣味の醍醐味です。

工夫や努力は苦手でも、人付き合いがソコソコにできるのならカラオケ仲間を作るのは簡単ですから、趣味はカラオケという人は増えています。

〇ボランティア

社会貢献したいという人は多いです。

ボランティア活動には「自発性」「無償性」「利他性」の要素があり、これらの要素は人間の尊厳にかかわり、喜びを感じます。

自分の利益のことを考えず相手に尽くす行為はかけがえのないものであり、子供の見守り、遊び相手、障碍者の外出サポートなど様々なニーズがあります。

また仕事経験を生かして国内だけでなく海外で活躍されている方も多く、特に途上国では、日本ではあり得ない環境で奮闘されています。

〇働く

労働ではありません。

己の意思で働く=働くことに喜びを見いだし報酬を得る人の特徴として、柔軟性・好奇心を持ち、自分の価値を理解し積極的且つ他人に“貢献”する気持ちが大きいように感じます。

具体例として、夫婦で住み込むマンション管理人などは掃除や宅配便の管理など仕事量が多い割に給料はそれほど高くありません。

しかし世話好きで、住民と触れ合えることが楽しみな夫婦であれば、住居も確保できますし、清掃や自転車の整理などをマメにやることで感謝されると更にやる気も起きます。

高齢者の就業率は年々増加していますが、多くは年金を受給しながらなので生活費全額を稼がなければならなかった定年前とは違い、働くことが趣味の延長であり、働くことが楽しいのです。

「人生の楽園」という長寿番組がありますが、定年後に喫茶店を開く、釣りが好きで海辺で民宿を始めるなど色々なケースが参考になります。

筆者も、カヌー作りが趣味で喫茶店を経営しながらお客さんにはカヌーを楽しんで貰う店を訪問したことがあります。

経営者にお話を伺うと、年金を貰いながら楽しんでやっているとのことでした。

新たに始めたことが人生を潤し、生きがいとなるのであれば、これほど嬉しいことはありません。

これらの人たちに共通するのは「人柄=自分らしさを生かしている」のです。

中には、複数の会社の顧問となったり、IFA(Independent Financial Advisor)独立系ファイナンシャル・アドバイザー=独立・中立的な立場から資産運用のアドバイスを行う専門家となって定年前よりも収入が増えている人もいますし、いつまで働くのかを自分で決めることが出来ます。

自分が楽しいと思える老後はどのようなものか、考える時間は十分にあると思います。

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