2022年11月
物価上昇が続いています。
家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる9月の消費者物価指数は、天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が、去年の同じ月を3%上回りました。
3%の上昇率は8年ぶり(2014年に消費税が3%引き上げ)、消費税率引き上げの影響を除けば1991年8月以来、31年1か月ぶりの水準となります。
その後も生活必需品である食料品や日用品の値上げは続いており、年金だけで生活している、預貯金を取り崩しながら生活している場合には不安が募ります。
- 不安解消のために最初に行うのは、何にお金を使っているのかを把握することです。
これまでも再三言っているのですが、そもそも家計簿はつけていない、又は家計簿はつけているもののつけているだけ。
住居費:賃貸であれば管理費込みの家賃なので明確ですが、戸建てを所有しているのであれば、建築後15年程度、以後は10年単位で屋根や壁の補修が必要(戸建ての大きさにもよりますが、
100万円単位)なので修繕費の積立が必要
食費(外食含む)・光熱費、医療費、保険料、交通通信費、趣味娯楽費、その他支出などで分類して把握している人は少なく、現状家計分析=収入、支出、貯蓄のバランスを検討する前に現状把握が必要というケースが多いのです。
現状把握後は家計の見直しで、必要なものは必要として、外食を減らす、スマートフォンを格安プランへ変更する、保険を見直す、電気・ガスを同じ会社にして割安にする、自家用車を売却するなどがありますが、これは一般論です。
これらの見直しで収支が改善するのであれば良いのですが、車を売ろうにも、車が無ければ生活できない地域もありますし、既に家計の見直しは十分に行っているが毎月の収支が赤字という場合もあります。
このような事態を招かないために参考になりますのが、金融庁が公表している「最低限身に付けるべき金融リテラシー」です。
リテラシーとは(知識・判断力)のことです。
ご参考→https://www.fsa.go.jp/news/25/sonota/20131129-1/01.pdf
最低限身につけるべき金融リテラシーとして4分野15項目が記載されていますが、ここでは身近な項目のみを紹介します。
1.家計管理:適切な収支管理(赤字解消・黒字確保の習慣化
2.生活設計:ライフプランの明確化、ライフプランを踏まえた資金確保の必要性の理解
3.金融知識及び金融経済事情の理解:契約に係る基本的な姿勢の習慣化
4.情報の入手先や契約の相手方である業者が信頼できる者であるかどうかの確認の習慣化
5.インターネット取引は利便性が高いものの、対面取引とは異なる注意点があることの理解
6.金融経済教育において基礎となる重要な事項(金利には単利と複利があること、インフレ・デフレ、為替の変動、リスクとリターンの関係)や金融経済情勢に応じた金融商品の利用選択についての理解
7.金融取引の実質的な費用について把握することの重要性の理解
7つも並べると難しく感じますが、家計管理ができないために老後資金を蓄えることができず、世帯主が70歳以上の高齢夫妻で貯蓄ゼロが約2割もあります。
・契約に係る基本的な姿勢、具体的には契約書をしっかりと読まないで押印した結果、多大な損失を被ったとか予想外に高い費用を負担させられた等の事例があります。
・情報の入手先や契約の相手方である業者が信頼できる者であるかどうかの確認の具体例では、建売住宅やリフォーム業者による手抜き工事で基礎が歪んでいる、雨漏りする、外壁がはがれるなどの事例があります。
・このような事例は沢山あるものの具体的な対応方法が分からないという場合に備えて、本年4月から高校家庭科で「生活における経済の計画」という項目があり、そのなかに家計管理があります。収支バランスやリスク管理と並んで、預貯金・民間保険・株式・投資信託・債券等の基本的な金融商品の特徴(メリットやデメリット)を教えることになっています。
では、既に社会人となっている方はどうすれば良いでしょうか?
筆者のお勧めは、FP相談です。(FPとはファイナンンシャル・プランナー=くらしとお金に関わる幅広い知識を持った「家計のホームドクター」)
日本FP協会ホームページでは、次のような項目があります。
・FPに相談する前にしっておきたいこと
FP相談の流れ、信頼できるFPの選び方、料金体系等
・みんなのFP相談集
貯蓄ができない、住宅ローン残高が多い、奨学金の利用等各種事例
・FP無料相談を体験する
・自分の希望条件に合ったFPを探す(自宅や勤務先に近いFPだと相談しやすい)
初回相談料が無料のFPも多いので、先ずは相談したら良いと思います。
- 何にお金を使っているのかを把握した後は支出を管理することです。
一般的には、「日常生活費」「一時出費」「医療・介護費」に分かれます。
なるべくなら日常生活費は年金で賄うことが理想です。
厚生労働省が発表した「令和2年度の年金額改定のお知らせ」では、令和2年度の厚生年金のモデル支給額は22万0724円となっています。
この金額は専業主婦家庭を想定し、平均標準報酬(賞与を含む月額換算43.9万円)で40年間働いた場合に受け取ることのできる年金(本人分の老齢厚生年金と夫婦2人分の老齢基礎年金)の給付水準となっています。
子供が独立しており住宅ローン残債も無く、自家用車も持っていない場合ですが、夫婦で実際にかかる日常生活費は月によって多少は異なるものの、約22万円程度です。
従って、住宅ローンや教育費があれば、22万円では無理ですから、その部分は収入を増やすか貯蓄から賄うことになります。
一時出費には、家のリフォーム、子供の結婚資金援助、自動車の買い替えなどがありますが、これらも出来る限り減らすことはできます。
家のリフォームは家を持っている限り必要ですが、家を売却して独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が管理する賃貸住宅へ入居することも一案です。
家賃の4倍の収入があれば入居可能なので、夫婦2人約50㎡で5万円以下(共益費込み)であれば公的年金で十分です。
自動車も本当に必要なのか、必要だとしても中古の軽自動車にするなど。高齢者になれば免許返上も考えなければなりません。
- 3番目の対策は収入を増やすことです。
簡単ではありませんが、奥様が専業主婦の場合にはパートで働く、本人が会社員の場合には、雇用延長または定年延長制度があるのなら可能な限り延長します。
既に退職年齢を70歳までとしている会社もありますが、現状では65歳が多いので、65歳を超えても働くことを検討することになります。
具体的にはハローワークへ行くことですが、経理などの専門職でない限り月額20万円以上をかせぐのは大変です。
しかし月額10万円でも収入があれば年金に加えることで生活に余裕ができます。
何の資格も経験もないと思われる方であっても、ハローワークの面接で気付くこともありますし、何より働く気力・体力を持っている方であれば金額の多寡はあれ収入を得ることができます。
勿論、ハローワークへ行くことにより失業保険等も得ることができます。
更に勉強する意欲があれば介護職などは人手不足であり正社員になることも可能ですし、パートであっても時給は比較的高いのです。
働く目的が自分の楽しみのためであれば良いかもしれません。
夫婦で温泉旅行をするために働く、ゴルフ代を稼ぐために働くなど動機は各々で違うかもしれませんが、楽しむために働くという考え方もあります。
働くことで気力と体力を維持するという考え方もあります。
また多少なりとも収入を得ることで、具体的には厚生年金+収入で生活できるのであれば国民年金だけを繰り下げることも一案です。
毎月0.7%ずつ増額されるので1年で8.4%増えます。
本年度の受給額は777,800円なので1年繰下げで843,135円、3年繰下げで973,805円、5年繰下げで1,104,476円となりますし、いつでも繰下げを止めることもできます。
会社員や公務員であれば厚生年金の積み立てに伴い自動的に自分と配偶者(配偶者の年収が一定額を超えない場合)は国民年金を積み立てていることになりますが、自営業では、国民年金を積み立てる必要があります。
令和4年度の1月当たりの積立額は16,590円です。
これを40年(20歳から60歳まで)支払うと7,963,200円ですから、本年度の受給額777,800円で計算すると11年目以降は積立額超過となります。
これらは一般論であり、個別にはFP相談することをお勧めします。
- 最後に、健康であり楽しみを大切にすること
十分な資産がある人、子供の扶養家族になれる人などは良いのですが、資産があっても生活習慣を変えたくない人などは「老後破産」の可能性があります。
老後破産とは、年金だけでは生活がうまくやりくりできず資産を切り崩し、最終的に資産をすべて失うことです。
これでは安心して生活することも、大量にある余暇時間を楽しむこともできません。
どれだけ事例を紹介しても一般論を多く語っても、それだけでは問題を解決することはできません。自分の意識と行動を変えることが必要です。
基本は収入と支出のバランスを図ることで生活を安定させて、余暇時間に収入を得ることで自分の楽しみを実現することが大事だと考えます。
では、退職金や貯蓄は何に使うのか→予測困難な「医療・介護」関連費用に充てる
「医療・介護費」または「高齢者施設等への入居費」は、予測不能でありコントロールできません。
病気や介護という事態はいつ発生するのか、あるいは発生しないのか、そして発生するとしてもどれぐらいの費用(期間)が必要なのか分かりません。
例えば自分や配偶者が痴ほう症になった場合に、どうすれば良いのでしょうか。
基本的には、退職金や自分が蓄えてきた金融資産で対応することになります。
どの程度の金額が必要なのかは、一般論では言えませんが、目途として夫婦で2,000万円程度を確保していれば安心でしょう。
物価上昇は継続する可能性が高く、生活の見直しは必須です。
健康上の問題や介護のために働けないという人もいるでしょうし、退職金が無いという会社もありますから、ここに記載してことは、あくまでも一般論です。
大切なことは収入と支出のバランスであり、貯めるべきお金を確保することで、できる限り安心した老後を迎える準備をすることです。